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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

「円高こそデフレの原因」説の怪しさ
──今こそ必要なデフレの経済学(6)

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第63回】 2010年3月20日
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 「円高はデフレを加速するので問題だ」と言われることがある。はたして、そうだろうか?

 原理的には、そうしたことはありうる。いうまでもなく、円高になれば円表示の輸入価格は低下する。だから、他の条件が同じなら、国内物価に低下圧力が加わるだろう。しかし、事態はそれほど単純ではない。為替レートの変化が消費者物価に伝わるまでには、さまざまな条件が関係するからだ。また、消費者物価は、為替レート以外のさまざまな要因によって影響されるからである。

原油価格などの変化が
輸入物価に大きな影響を与える

 最初に、為替レートと輸入物価の相関を見よう。

 為替レートが輸入物価に影響を与えることは明らかだが、輸入物価に影響を与えるものは、為替レートだけではない。原油、資源、食料などの国際価格の変化が影響する。また、技術革新によるIT関連財の価格低下も影響する。

 実際のデータを見ると、【図表1】に示すとおりだ。ここでは、為替レートとして名目実効為替レートをとっている。

 為替レートと輸入物価の間には、たしかに負の相関が見られる。具体的には、つぎのとおりだ。

①1995年春頃から98年夏頃まで、円安が進行。輸入物価は上昇した。

②1998年夏頃から2000年末頃まで、円高が進行。輸入物価は99年末頃までは若干下落。

③2001年初め頃から2005年頃まで、為替レートは大きく変わらず。輸入物価も04年初め頃までは大きく変わらず。

④2005年頃から2007年夏まで、かなり顕著な円安が進行。輸入物価は08年夏までかなり顕著に上昇。

⑤為替レートは2007年夏以降、急激な円高。輸入物価は2008年夏以降急落。

 ただし、詳しく見ると、負の相関から外れた動きも見られる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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