ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
シンプルに考える
【第35回】 2015年9月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
森川亮

LINE(株)CEOを退任した森川亮の「考え方」
「計画」立案の専門家が、会社をダメにする理由

 

 私は、「計画者」と「実行者」を分けてはいけない、と考えています。
 大企業には多くの場合、「計画」をつくることを仕事とする、いわゆる「事務方」と呼ばれる人々がいます。そして、日々ユーザーと向き合って、懸命に「いいもの」をつくろうと努力している現場の人々よりも、「事務方」が権威をもつことがあります。そのことに、僕は常々疑問を感じていました。なぜなら、そのために非常に大きな弊害が生まれているからです。

 最大の弊害は、「事務方」が権威をもつことによって、計画を達成することが目的となってしまうことです。

 たとえば、スケジュール管理。たしかに、きちんと工程管理をすれば計画どおり生産できる業態であれば、スケジュール管理をすることに意味があるでしょう。しかし、新商品を開発するといったクリエイティブな仕事は、必ずしもスケジュールどおりに進められるわけではありません。

 クリエイティブとは「ゼロから1」を生み出す仕事です。いいアイデアが浮かばなければ、一歩も先に進むことができません。そもそも、「スケジュール管理」できないものなのです。にもかかわらず、スケジュールどおりに進めようとすれば、クオリティを落とさざるをえません。

 売上管理もそうです。年度末に向けて、このままでは計画どおりの売上を達成することができない。だから、クオリティの低いプロダクトでも無理やりリリースしようとする。これでは、本末転倒ではないでしょうか?

 僕たちは計画を達成するためにプロダクトを生み出すわけではありません。あくまで、ユーザーが幸せになるようなプロダクトを生み出すのが本筋。「事務方」が権威をもつことで、この本来あるべき姿が歪んでいくのは、きわめて深刻な弊害だと思うのです。

 それだけではありません。
 もうひとつ重要な問題が発生します。

1967年生まれ。筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。コンピュータシステム部門に配属され、多数の新規事業立ち上げに携わる。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。03年にハンゲーム・ジャパン(株)(現LINE(株))入社。07年に同社の代表取締役社長に就任。15年3月にLINE(株)代表取締役社長を退任し、顧問に就任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel(株)を設立、代表取締役に就任。(写真:榊智朗)

 なぜなら、計画には失敗がないからです。「事務方」は計画をつくり、その実行を現場に求める。計画どおりにいかなければ、それは現場の責任。「事務方」が責任を問われることはありません。だからこそ、“賢い人”ほど「事務方」を目指します。そのほうが、“出世”への近道だからです。

 しかし、それが本質的に正しいことでしょうか? 僕は、はなはだ疑問です。会社にとって、もっとも重要なのはユーザーに喜ばれるものをつくり出すこと。そのためにがんばっている現場のスタッフが、いちばん報われる組織でなければならないのではないでしょうか?

 だから、LINE株式会社にはいわゆる「事務方」はいません。
 事業リーダーが現場のスタッフとともにどのように仕事を進めるかを話し合う。そして、それぞれのチームごとに計画を共有する。それで、十分なのです。

 もちろん、文書化はしません。毎日のようにチームで話し合っていますから、わざわざ文書化しなくても、頭のなかで計画は共有されています。それに、時々刻々と状況は変化しますから、計画を文書化することに意味がない。むしろ、いちいち作り直すことに労力を使うよりも、プロダクトの制作に全力を上げてもらったほうがいい。

 それで何の問題も発生しないどころか、むしろ、望ましい状況が生まれます。なぜなら、自分たちが実行する計画ですから現実的なものになりますし、自分たちが考えた計画だからこそ実行力も伴うからです。(『シンプルに考える』森川亮・著より)

スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

トレーシー・カチロー 著/鹿田 昌美 訳

定価(税込):本体1,600円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
子どもの豊かな心を育て、頭と体を伸ばしていくために親が知っておきたいことについて、最新の科学研究をもとに「最も信頼」できて「最も実行しやすい」アドバイスだけを厳選して詰め込んだ貴重な本。子にかけるべき言葉、睡眠、トイレトレーニング、遊び、しつけまで、これ一冊さえ持っていれば大丈夫という決定版の1冊!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


森川亮 

1967年神奈川県生まれ。1989年筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。幼少時から一貫して音楽を続けてきたこともあり、音楽番組の制作を希望するもコンピュータシステム部門に配属。本格的にコンピュータを学ぶ。インターネットの登場に刺激を受け、ネット・ビジネスに傾倒。ネット広告や映像配信、モバイル、国際放送など多数の新規事業立ち上げに携わる。仕事のかたわら青山学院大学大学院にてMBAを取得。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。2003年にハンゲーム・ジャパン株式会社(後にNHN Japan株式会社、現LINE株式会社)入社。4年後には日本のオンライン・ゲーム市場でナンバーワンとなる。2007年に同社の代表取締役社長に就任。2015年3月にLINE株式会社代表取締役社長を退任、顧問に就任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel株式会社を設立、代表取締役社長に就任した。


シンプルに考える

「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を考え抜く。そして、本当に大切な1%に100%集中する。シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。LINE㈱CEO退任後、注目の経営者がはじめて明かす「仕事の流儀」!

「シンプルに考える」

⇒バックナンバー一覧