年末の2016年度予算編成に向けた動きが、活発化しはじめている。誰もが重要性を認識する、子どもの貧困問題を解決することに対して、必要な予算は確保されるだろうか?

今回は、子どもの貧困対策センター「あすのば」の政策提言と、夏休みに表面化する貧困状態の子どもの困難を中心にレポートする。

貧困世帯への「現金給付」に
込められたメッセージとは?

批判の多い現金給付が<br />「子どもの貧困」解決に不可欠な理由小河光治(おがわ・こうじ)さん
1965年、愛知県生まれ。交通遺児として、交通遺児育英会の奨学金で高校・明治大学に進学。大学在学中より、奨学金制度を交通遺児だけではなく災害・病気・自殺などの遺児にも適用する運動を開始し、代表を務めた。卒業後は現在の「あしなが育英会」専従となり、26年間勤務。福島大学大学院修士課程で、子どもの貧困対策の現状と課題についての研究も行う(2015年3月修了)。2015年6月より「一般財団法人あすのば」代表理事。「あすのば」オフィスのある赤坂にて。
Photo by Yoshiko Miwa

「ひとり親世帯や子どものいる貧困世帯を対象とした、児童扶養手当や就学援助などの現金給付には、『本来の目的ではない用途に使われる』という批判が多いです。生活保護もそうですけれども」

 子どもの貧困対策センター「一般財団法人あすのば」で代表理事を務める小河光治さんは、子どもの貧困に対する経済的支援に関する現状から語り始めた。

「でも、その人たちに届けられる現金は、『あなたたちを見捨てていません』というメッセージなんです。その人たちが『私たち、見捨てられていないんだ』というメッセージを受け取りつづけることは、小さくても希望につながっていくんです、この効果は、非常に大きいと思っています」(小河さん)

 もちろん、「子どもの貧困」に関する問題の何もかもが、現金だけで解決するわけではない。人と人のつながり、関係と参加を続けられるコミュニティ、必要であれば専門家の関与、もちろん政策を実行する体制と人員。どの一つも、一定の経済的基盤を必要とはするけれども、経済的基盤が整備されただけでは実現しない。

「子どもの貧困を解決するためには、ソフト面とハード面の両方が必要です。でも基本は、そのために用意するお金の金額を、増やしていかなくちゃいけないというところにあります。だから、来年度の予算編成を視野に入れて、この7月、政策提言を行いました。政府が年末をメドに、子どもの貧困対策に関する政策パッケージを発表する方針を示していますし」(小河さん)

「あすのば」が7月29日に発表した「子どもの貧困対策『政策パッケージ』に関する提言」では、冒頭に「ひとり親世帯への対策」が挙げられている。内容は下記の通りだ(赤字も原文どおり)。

児童扶養手当の増額、とくに2人目以上の子どもへの加算の増額
児童扶養手当や遺族年金などの子どもへの支給を20歳まで延長を
児童扶養手当の対象となる死別父子家庭に遺族基礎年金と同額・同条件の経済支援を

「現金給付の拡大こそが重要」というメッセージが伝わってくる。