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株価連動の役員報酬は、
株主による経営者の「買収」だ

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第392回】 2015年9月2日
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株価連動の役員報酬を“良きもの”と
印象づけるキャンペーン

株価や業績に連動する役員報酬の比率を上げる動きが広がっているが…

 上場企業で株価連動の役員報酬比率を上げる動きが加速している。「経営者クラブ」の広報誌的な役割を持っている『日本経済新聞』などは、役員報酬を株価や業績に連動させることを会社の「成長戦略」と呼んで、良きものとして世間に印象づけるキャンペーンを行っているように見える。

 8月31日の『日本経済新聞』(朝刊)は、ストックオプション(株式購入権)に個々の取締役の業績貢献を反映させる制度を導入する資生堂や、信託を使った役員に対する自社株付与を取り入れるアステラス製薬などの事例を、好意的なトーンで報じている。

 また、補足的説明記事で、日・米・英の売上1兆円以上の大企業の経営トップの報酬(中央値)における、「固定的な役員報酬・ボーナス・ストックオプションなど長期インセンティブ」の合計額及び、比率をグラフで紹介している。

 大まかに言うと、日本の経営トップの報酬総額が1億円少々であるのに対して、米国はそのざっと10倍強、内訳を見ると日本では固定報酬比率が圧倒的に高く、他方、米国では「ストックオプションなど長期インセンティブ」が約7割を占めている。英国は、額も比率も、日米の中間だ。

 実態は、おおむねこのようなものなのだろうが、ストックオプションを「長期インセンティブ」と呼ぶのは、美しいニュアンスを「盛り過ぎて」いないか。

 ストックオプションの行使期間が付与後3年程度以降に始まることをもって、「短期志向にならない」、「中長期の業績向上に役員の関心を向ける」といった説明を弄しているが、たとえば、ストックオプションを貰ってから3年目を迎える経営陣が、より高い株価でこれを行使しようとして、3年目の業績に特に力を入れるといった「短期志向」はいくらでも起こり得る。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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