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対談 中国民主化研究
【第7回】 2015年9月11日
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加藤嘉一

挑発もせず、譲歩もしない。事実に基礎を置くことで日中関係は前進する
——東京大学名誉教授・北岡伸一×加藤嘉一

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今年は終戦から70年を迎える重要な年であり、特に中国・韓国といかなる関係を構築するのかが改めて議論されている。揺れる巨人・中国はどこに向かっているのか、そして、日本は中国といかに向き合えばよいのか。東京大学名誉教授であり、「日中歴史共同研究委員会」日本側座長や「21世紀構想懇談会」座長代理を務めた北岡伸一氏に、加藤嘉一氏が聞いた。対談の最終回。

「侵略」「植民地支配」「謝罪」「反省」の
4つのみにフォーカスするのは愚か

加藤 今年は、戦後70年です。習近平政権の現在に考えをおよぼすと、反腐敗闘争などを主導しながら権力基盤を強化し、その過程で習近平本人にかなりの権力が集中してきた現象を見出せます。一方で、対日関係という観点からすれば、習近平が対日関係をそれなりに重視し、みずからの意思で動いているように見えます。北岡先生は、中国の対日政策をどのように評価されますか?

 私は、日本といかに付き合うかという問題は、中国にとっては内政問題の側面が引き続き色濃く出てくると思っています。なぜなら、中国共産党の正統性の首根っこをここまで掴んでいる国は他にないからです。そのなかで、ただ単純に日中関係を安定させる、日本が利益を得るという視点ではなく、中国社会を長期的かつ健全に変えていくうえで、日本はどのような姿勢で臨むべきなのでしょうか?

北岡伸一(きたおか・しんいち)
1948年、奈良県生まれ。76年、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、法学博士。立教大学教授、東京大学教授を経て、現在、国際大学学長、政策研究大学院大学学長特別補佐・特別教授、東京大学名誉教授を務める。その間、04‐06年には日本政府国連代表部次席大使を務めたほか、日中歴史共同研究委員会日本側座長などを歴任する。著書に『清沢洌―外交評論の運命』(増補版、中公新書、サントリー学芸賞)、『日米関係のリアリズム』(中公叢書、読売論壇賞)、『自民党―政権党の三八年』(中公文庫、吉野作造賞)など多数。

北岡 これは大問題ですね。私は繰り返し言っていますが、4つのキーワードだけにフォーカスするのは愚な話です。4つの内の2つは「侵略」と「植民地支配」です。これは認識系の言葉です。残りの2つは「謝罪」と「反省」です。これはお詫び系の言葉です。ニュアンスこそ時によって違いますが、中国は歴史を直視せよということを繰り返しています。つまり、中国にとってより大事なのは前の2つだということです。

 戦犯を裁いて領土を引き直し、賠償金を払うあるいは賠償放棄をすれば、通常、戦争は終わりです。それでもなおブレイムゲームを続けるのは、本当にやめてほしい。ただ、中国はやめる可能性があると思います。やめないかもしれないのは、日本のメディアと韓国です。仮に中国がこの辺りでいいかと思っても、朝日新聞がわあっと文句を言うと、それに影響される可能性がある。

 米国は、中国はヒストリーカードは手放さないと言います。しかし、私は必ずしもそうは思いません。中国に知識がしっかりと普及すれば、それはだんだんと変わってくると思っています。私たちが日中歴史共同研究やったときの真の目標は、だいぶ先の話ではありますが、日中双方の立場を書いた副読本をつくりたいということでした。この事件は日本でこう言われている。一方で、中国ではこう言われています、ということを併記するのです。

 歴史対話はやはりやるべきで、究極のところで両論併記型の近代史の副読本をつくり、みんなが読むようにすればいいと思います。ただ、中国との対話やるときに難しいのは、政府と無関係な人を集めても仕方ないが、あまりに政府とべったりの人でも困るということです。下手にやると、近代史を彩るのは日本の侵略と中国の抵抗だけだということになってしまう。そんな近代史はないわけです。それは長い目で融かしていくしかありません。

加藤 私もまったくそう思います。また、高校生や大学生など、若い世代が歴史認識を巡って対話や交流を進めていくことも未来投資という意味で重要だと考えます。この手のプロジェクトに関しては、中国政府は監視することはあっても、取り組み自体を妨害することはしないように思います。日中間で多角的な歴史対話が行われてこそ健全だと考えます。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


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