ある広告企画に関してライバル会社であるX社とY社でコンペになった。どちらの会社もリソースは互角で、与えられた時間も等しく2週間あったとする。
それにもかかわらず、コンペの結果、採用されたのはY社の企画だった。
とはいっても、Y社はずば抜けて素晴らしいアイデアを出したというわけではない。率直に言えば、X社が提案していてもおかしくない堅実な案だった。なぜこの差がついてしまったのだろうか?

それでも「たくさんのアイデアを出せる人」が勝つ

アイデアの戦場において最も避けなければならないのは、「自分も発想し得たアイデアを、競合がより早く発想してしまうこと」だった。

この敗北を「しまった」と呼ぶことにしたい。

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【第1回】

“ヒット商品が出ない人”に共通する「しまった!!」の敗北とは?

前述のとおり、採用されたY社の企画案は、決してずば抜けて素晴らしいものではなかった。だからこそ、X社のメンバーは歯噛みしてくやしがった。
「なぜうちはあの程度の企画を出せなかったんだ!」と上層部もカンカンである。まさに「しまった」の典型だ。

じつはX社の社内会議の段階では、下図にあるとおり、3つのアイデアが検討されていた。そして、その中で最も質が高そうなc案がコンペにかけられた。

一流の人ほど自分の「嗅覚」を疑い、三流の人ほど「ひらめき」に賭ける

一方、上図のとおり、Y社の社内会議でもc案は候補としてあがっていた。しかし、これを含めて全部で9つの案が検討されており、最終的には最も質が高そうなh案で勝負をかけることにした。

いざコンペで負けたときに、X社が「しまった!!」と感じるのは、自分たちも「h案」を発想できたはずだったと思うからである。それなのに、なぜアイデアが出てこなかったかといえば、それは発想を広げるのを途中でやめてしまっているからである。