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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国「抗日軍事パレード」から
透けて見える6つの問題点

加藤嘉一
【第60回】 2015年9月15日
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「仕方ない、ここは北京ですから」
閲兵式をひかえた市民たちの本音

軍事パレードでは、10年前の胡錦濤前総書記の談話とは異なり、中国共産党と中国国民党どちらが抗日戦争を領導したかには言及せず、主語を“中国人民”としていた習近平総書記 Photo:AP/AFLO

 2015年9月2日お昼すぎ、北京の天安門広場から約10キロ離れた北三環路付近にあるモンゴル料理屋に入ると、真っ暗な店内にぽつりと立っていた女性の店員から「今日は営業しません」と告げられた。理由を尋ねると、

 「明日午前、北京では閲兵式があります。前日のお昼、夜、当日のお昼まで休みで、夜から通常営業になります」

 このように回答してきた。閲兵式は軍事パレードとも呼ばれる。

 「3食分も休まなければならないとなると、お店の収益にも少なからず影響が出るでしょう。大丈夫ですか?」私は続けてこのように問うた。

 「ここは北京ですから」

 仕方がないといった面持ちであった。北京は中国共産党政権にとっての総本山であり、ここでは何よりも政治のロジックと必要性が重んじられるという意味であろう。この店員によれば、北京当局は前日と当日のお昼まで休業するように“通告”してきたのみであり、相談の余地はなく、かつそのせいで生じ得る損失に対する補助金も一切払われないとのことであった。

 同日夜、北三環路の片隅に身を寄せていた私は、閲兵式を約14時間後に控えた北京の街々が真っ暗に染まっていく雰囲気を感じていた。公道を一緒に歩いていた中国の知人は、「ここで経済は重要じゃない。心境は様々だろうが、皆共産党の言うことを聞くのだ」と呟いていた。

 空を見上げると、星々がいつになく輝いていた。

「抗日戦争勝利」から70年
閲兵式で目にした元老たちの姿

 9月3日午前、青い空と白い雲に包まれた北京で閲兵式が開催された。私は北京市内のテレビ画面でその模様を観ていた。本稿では、中国共産党が“中国人民抗日戦争兼反ファシズム戦争勝利70周年記念式典”と題した舞台のなかで敢行した閲兵式を眺めながら、私が注目したケースを6つ取り上げ、そこから導き出されるインプリケーションにも踏み込んでみたい。本連載の核心的テーマでもある中国民主化研究とはすなわち中国共産党研究であり、共産党の動向を追跡する意味において、“9.3大閲兵”は貴重なケーススタディになるはずである。

 1つ目が中国共産党の“高層政治”についてである。閲兵式に際して、中国共産党の指導者や海外から出席した首脳陣が天安門上に登ったが、そこには“現役”の国家指導者たち以外に、中国共産党の最高意思決定機関を構成する政治局常務委員を経験した元老たちの姿もあった。たとえば、

 江沢民、李鵬、曽慶紅。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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