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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

安倍談話を「ごまかしの産物」と牽制する
中国共産党の本心

加藤嘉一
【第58回】 2015年8月18日
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中国共産党は“安倍談話”を
どう評価したのか?

談話には3つのキーワードが盛り込まれ、中国側の要求を満たしたにもかかわらず、中国の政府が日本を牽制し、メディアが日本を批判したのは何故であろうか

前回コラムでは、習近平国家主席率いる中国共産党指導部が戦後70年に際して発表する“安倍談話”に何を求めるか、というテーマを扱った。

 「あくまでも“侵略”“植民地支配”“心からのおわび”を求めつつ、ボトムラインは“村山談話”という4文字の固有名詞に引く」

 このように指摘した上で、私は「安倍談話が中国側の“要求”を満たしたものになるか、“ボトムライン”を満たしたものになるか、あるいはそのどちらも満たさないものになるかによって、中国側のその後の対日政策は少なからず変わってくるであろう」という推察を述べた。

 8月14日午後、閣議決定を経た“安倍談話”は世間へと公表され、日本や海外のメディアがリアルタイムでそれを追いかけ、分析を加えるという具合であった。それだけ安倍晋三首相の歴史認識に世界中の注目が集まっていたということだろう。

 本稿では、前回コラムの続編として、中国共産党指導部が“安倍談話”をどう認識し、どう反応し、そしてこれからの対日関係をどうマネージしていこうとしているのか、という問題を考えてみたい。

 まずはファクトを拾ってみたい。

 安倍談話は“侵略”“植民地支配”“心からのおわび”という3つのキーワードを明確に含んでいた。

前回コラムでは、仮に3つのキーワードに言及しなかったとして、“村山談話”という固有名詞に明確に言及することが中国共産党のボトムラインである、と指摘した。

 結果的に、安倍談話は“村山談話”には触れなかった。“代わり”に、「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました……(中略)こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります」というパラグラフにおいて、安倍内閣が歴代内閣の立場を継承することを表明する形を取った。

 “心からのお詫びの気持ち”という言葉を使用している。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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