『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が第5刷となった。
本連載シリーズ記事も累計179万ページビューを突破し、大きな話題となっている。
そんななか、8月28日、東京駅前の八重洲ブックセンター本店で、本書の出版記念講演会が開催された。
当日は金曜夜にもかかわらず、地方からも多くの方が押しかけ、満員御礼になった。
普段の広瀬氏の講演会は「最低3時間以上」だが、この日は「60分間」限定。
しかし、会場からは「密度が濃すぎた」「とても1時間では語り尽くせない内容だった」「本当にきてよかった」と真顔で話し出す人が続出!
それを見た担当編集者は、この熱気を全国津々浦々の方へ届けたいと、広瀬氏にリクエスト。ついに、濃密な講演内容を3回に分けてリリースできることになった。
反安倍政権の動きと、緊迫感高まる川内原発再稼働問題のなか、注目の2回目をお送りする!
三菱重工の工場に
抜き打ち立ち入り検査!
ほんの3年前の2012年1月31日、アメリカのカリフォルニア州のサンオノフレ原発で、蒸気発生器の細管が破損したため、原子炉が緊急停止し、放射性物質が大気中に漏れた。
サンオノフレ原発では、この写真の、三菱重工が納入したばかりの最新の蒸気発生器細管が穴だらけで破損していたことが明らかになったのだ。
左下に緑色の服を着た人間がいるので、どれほど巨大な装置であるか、お分りだろう。
大反響のあったダイヤモンド書籍オンライン第12回、第13回、第14回などでお伝えした通り、元NHKアナウンサーの堀潤さんが、この事故がアメリカで大問題になっていた2012年に、ちょうどカリフォルニア大学(UCLA)に留学していて、取材をすることができた。
(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。
堀さんによると、アメリカのNRC(原子力規制委員会)が、三菱重工の兵庫県の工場に抜き打ちの立ち入り検査をした、そして2基の原発が「廃炉になった」という大事件は、そういうことだったのだ。
しかも、この蒸気発生器は2009~2010年に設置されたばかりで、稼働して1年たたずに事故を起こした。
つまり新品が事故を起こしたのだ!
加えて、日本の低レベルな原子力規制委員会や電力会社と違って、アメリカのNRCは、メカニックな問題に関して、きわめて高度な技術的能力を持っている。その頭脳集団が「三菱重工は信用ならない業者だ」と判定を下して、廃炉になったのだから、決定的である。
アメリカの電力会社が「廃炉」を決断したのは、三菱の欠陥製品を使って運転すれば、大事故を起こす、それがこわかったからである。
莫大な損失となる「廃炉」より、大事故を起こした時の損失のほうが、桁違いに大きい。