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見栄と利害で結束した「中韓ホットライン」に
日本外交は太刀打ちできるか?

ジャーナリスト・嶋矢志郎

嶋矢志郎 [ジャーナリスト]
2015年9月23日
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中国の戦勝70年記念式典と軍事パレード以降、習近平国家主席と韓国の朴槿恵大統領の「蜜月ぶり」がクローズアップされている。日本は状況をどう見据えるべきかPhoto:代表撮影/ロイター/アフロ

 白日の下で、主役が蒋介石から毛沢東にすり替えられているとは、驚天動地である。中国が本音の恥部を遂に露出、臆面もなく曝け出した歴史修正主義の一端である。

 中国が9月3日に北京で開催した「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70年」の記念式典に併せて公開された戦争映画『カイロ宣言』の歴史改ざん騒動が話題になっている。ポスターには米ルーズベルト、英チャーチルに、出席していないソ連のスターリンと毛沢東が顔を並べ、出席していた蔣介石の姿がない。予告編では、毛沢東があたかも主役のような存在感で多くの場面で登場、大活躍である。

 さすがに中国の国内でも「功績の横取り」「史実の捏造」「恥を知れ」などと、批判の声が広がっている。ネット上でも非難や嘲笑が飛び交い、笑い種である。いわゆる「炎上」狙いで、国内外の世論は中国当局の巧妙な操作に嵌っている、との斜に構えた見方も出てきている。歴史の虚実を不透明にして、白も黒と思わせなければならない国情が垣間見える。

世論操作への「炎上」狙いか?
カイロ宣言の蒋介石を毛沢東にすり替え

 カイロ宣言とは、第二次世界大戦中の1942年11月に米英中ソの各国代表がエジプトのカイロで開催した首脳会談で、連合国側の対日戦後処理の方針を打ち出した宣言である。出席者は、米ルーズベルト大統領、英チャーチル首相、それに中華民国・国民政府の蒋介石主席の3人で、ソ連の最高指導者であるスターリン・ソ連共産党書記長は蔣介石との同席を嫌って、欠席していた。

 当時、中国では蒋介石が率いる反共勢力の国民党と、毛沢東が率いる中国共産党が凄惨な激闘を繰り広げる内戦状態の下で、侵略してきた日本軍との戦いも余儀なくされ、対峙していたのは紛れもなく国民党であった。その頃、毛沢東はどこで何をしていたのか。史実によると、中共軍は延安での「延安整風」の途上にあり、毛沢東はその陣頭指揮に立っていたのである。中共軍が国民党軍に追われて、「長征」という名の逃亡の末に辿りついたのが、陝西省の山岳地帯であった。毛沢東はここで「党の気風を整え、改善する」狙いから、共産党員の粛清に手を染め、このときの犠牲者だけでも1万人超と言われている。

 中国の辺鄙な山中の延安にいた毛沢東がなぜ、カイロでの首脳会談で先導的な役割を果たすことができるのか。そんなことは「荒唐無稽な話で、史料が証明している」として、歯牙にもかけないのが台湾国士舘の呂芳館長である。

 しかし、この映画を製作したのは中国人民解放軍の「八一映画製作所」で、人民解放軍を管轄しているのは中央軍事委員会である。その主席は、言うまでもなく習近平国家主席である。となれば、習指導部のお墨付きを得て仕掛けた上からの世論操作に、その狙いが隠されている。現に、習指導部ではこの戦争映画を鑑賞するよう、国を挙げて推奨している。

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嶋矢志郎 [ジャーナリスト]

ジャーナリスト/学者/著述業。東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社(記者職)入社。論説委員兼論説副主幹を最後に、1994(平成6)年から大学教授に転じ、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授などを歴任。この間に、学校法人桐朋学園理事兼評議員をはじめ、テレビのニュースキャスターやラジオのパーソナリティなどでも活躍。専門は、地球社会論、現代文明論、環境共生論、経営戦略論など。著書・論文多数。


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