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脂肪摂取量が同じでも心臓病罹患率に大差!
データが語る「良い脂」「悪い脂」

夏目幸明 [ジャーナリスト]
2015年9月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
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論文を読むのが日課という「めんどくさいお医者さん」、東京大学病院の地域医療連携部にいる循環器専門医・稲島司氏。世に流布する「健康的なイメージ」と、科学的に「効果が証明されたもの」を区別する方法を提案している。

夏目 先生、最近、近所に旨い焼肉屋さんができたんです。久々に一杯、いかがですか?

脂肪の摂取割合が同じなのに、デンマーク人とイヌイットでは、明らかにイヌイットに心臓病は少ない。理由は、食事から摂取している「脂」の種類の違いにあるという

稲島 いいですね。でも肉ですか……。魚のほうが体にいいんですが。

夏目 根底から覆しますね。

稲島 ええ、同じ脂でも魚の脂は、心臓病のリスクを減らす可能性が高いんです。

夏目 何となくイメージ通りですが、牛肉や豚肉と魚で、そんなに違いがあるんですか?

なぜイヌイットは明らかに
心臓病のリスクが低いのか

稲島 じゃあ、下の表を見てください。簡単な比較です。

夏目 簡単って言いながらいつも難しいんですよね……。って、今度は本当に簡単だ!

Acta Med Scand. 1972;192(1-2):85-94

稲島 1972年に発表された調査ですが、デンマーク人と比較すると、グリーンランドのイヌイットは心筋梗塞などの人数が非常に少なかったんです。

 ここでいう心臓病は、主に「冠動脈」という心臓を囲む血管からくる病気です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を担っていることはご存じだと思いますが、心臓自身が受け取る酸素や栄養は、「冠動脈」から受け取ります。

 カエルなど原始的な生物の心臓は、心臓の中に入っている血液で動いてくれます。しかし、人間の心臓は少し複雑で、心臓から体中に血液を送り出す大動脈から枝分かれした冠動脈によって一旦、心臓から駆出された血液の酸素・栄養が届きます。この冠動脈が狭くなったり閉塞したりすることで、狭心症や心筋梗塞が起きます。そういった心臓病の割合が、イヌイットは非常に低かった、つまり冠動脈の動脈硬化が予防されたというのです。

夏目 心臓病と言っても実際は血管の病気で、動脈硬化からくるんですね。脂はどう関係してくるんでしょう?

稲島 脂肪の摂取割合が多いと心筋梗塞になりやすいことが1960年代には明らかにされていますが、次の図を見てもらうと、食事内容(カロリー%)のうち、脂肪の摂取割合はイヌイットはデンマーク人とほぼ同じだったんです。それにもかかわらず心臓病が少なかった。

夏目 うん、わかりやすい、気がする!

稲島 すると、イヌイットとデンマーク人の間で何が違うのか知りたくなりますよね。その違いこそが、図の右側「血清『脂肪酸』の割合」でした。イヌイットは脂肪酸の中でも特に「EPA(エイコサペンタエン酸)」という、魚やアザラシに含まれている成分が非常に多く、デンマーク人はほとんど「EPA」が含まれていなかったんです。病気の頻度の差は、彼らの食生活の違いからきていると考えるのが自然でしょう。

夏目 あぶらの一種なのに動脈硬化を予防してくれるんですね。

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夏目幸明[ジャーナリスト]

1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店に入社。その後、雑誌記者に。小学館「DIME」の『ヒット商品開発秘話 UN.DON.COM』や講談社「週刊現代」の『社長の風景』などを連載中。著書に『大停電(ブラックアウト)を回避せよ!』(PHP研究所)などがある。


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