ついに安保法案成立!<br />参院審議の混沌が示した「政治の限界」(下)まつい・まさひろ
1979年6月14日生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。工学・教育学の2つの修士号を持つ。国家公務員1種法律職試験合格(政策秘書資格取得)。国連英検A級。マッキンゼーアンドカンパニーなどグローバル企業での勤務を経て、国会議員政策担当秘書として政界へ飛び込む。35歳の若さで、第47回衆議院議員選挙に兵庫10区(加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)より出馬し、5万1316票を獲得するも落選。一民間人の感覚で政治の現場や裏側を見た経験を活かし、これまでブラックボックスだった政治の世界をできる限りわかりやすく面白く伝えることに情熱を燃やす

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ちなみに議長を務めているのは、鴻池祥肇(こうのいけ・よしただ)議員。2009年に愛人と熱海へ旅行に行った際、JR無料パスを使ったとして批判され、自民党兵庫県連を除籍されながら再び舞い戻った、不死鳥のように元気な74歳の重鎮議員である。

 さて、そんな与党に論戦を挑んだ野党議員の顔ぶれを眺めてみよう。

 最大野党である民主党は11名。安倍総理に憲法の条文のクイズを出したことで有名になった「コニタン」こと小西洋之議員は、今国会においても安保法制をめぐって、外交防衛委員会で「憲法違反のお先棒を担ぐような官僚は絶対に許さない。政権を奪い返して必ず処分する」と叫び、波紋を広げた。また、小西議員は委員会での採決の際には委員長にフライングボディアタックを決めようとして自民党議員に防がれ、失敗に終わった。その他にも、蓮舫議員、白眞勲(はく しんくん)議員といったユニークな顔ぶれが在籍している。特に有名な平安特での議論は、大野元裕議員とのやりとりだろう。

 8月26日、民主党の大野議員が「退避する邦人が米軍艦に乗っていることのどこが『存立危機』なのか」と問うたのに対し、中谷元防衛大臣は「邦人が乗っているかは判断の要素の1つではあるが、絶対的なものではない」と答え、日本人が乗っていようがいまいが、存立危機と認定される可能性があり、いかにこの言葉の定義が曖昧かを露呈させた。

 また、蓮舫議員が中谷元防衛大臣の言い間違いを追及した際、安倍総理が「いいじゃん、そんなこと」と野次を飛ばしたとして、委員会が一時紛糾する場面もあった。

 一方、最近お騒がせ感のある維新の党からは、平安特には2名が所属している。清水貴之議員(元朝日放送)、真山勇一議員(日テレ)は、どちらもテレビアナウンサー・キャスターである。また、元タレントの山本太郎議員も平安特に所属しているから、野党の席は有名人が多く、華やかである。さすがにテレビ慣れしており、滑舌もよく聞きやすい質問をする。中身については、実際にインターネットなどで彼らの質疑を見ていただき、各自の評価に委ねたい。山本太郎議員は、本会議での採決には喪服で1人牛歩戦術を展開し、投票の際には焼香のポーズをとるパフォーマンスを見せた。

 さて、この会議の場を見て「良識の府」と呼べるかどうかは、読者の皆さんが実際に議論を眺めて判断していただきたい。次の参議院議員選挙まであと10ヵ月。彼らのパフォーマンスを投票の参考にしてはいかがだろうか。その頃には、多くの人は「アンポホウセイ」なんて忘れてしまっているかもしれないが……。

ヒステリックになりがちな安保議論
最大の論点は「立憲民主主義」の否定

 ここからは、そんな攻防を経て成立した安保法案に対する筆者のポジションを述べよう。「反対」である。その理由は「立憲民主主義の否定につながるから」である。なんだか難しそうな理由だが、実はシンプルな話である。

 もちろん、憲法も所詮は人がつくったものだから、間違いはある。しかしだからと言って、権力者が勝手に「解釈」していいものではない。たとえば、憲法24条には「婚姻は両性の合意のみに基いて成立する」と定められている。これを「少子化対策が必要だから婚姻数を増やそう」といった「必要論」によって勝手に「合意」の意味を拡大解釈していいものだろうか。