住処のない人々と
空室率に悲鳴を上げる大家さん

 だが、きめ細かな運用をもってしても、入店できなくなる利用者は出てくることだろう。こうした人々の受け皿がないまま条例が施行されれば、ファミレスやファーストフードで夜を明かす人が増える。そこもいづらくなれば、今度は路上に出ざるを得ない。

 いちおう、東京都では2008年度より住居を失った人を対象に住宅資金や生活資金を融資している。総額で最大60万円だ。この事業に寄せられる期待は熱く、当初1年間の問い合わせは3498件にものぼったという。

「しかし融資には審査があり、東京都に6ヵ月以上滞在していない人ははじかれてしまう。また一定の収入を満たしていなければならない。結局、同年度、住宅資金の貸付を受けられた人は177件にとどまっています」(稲葉さん)

 また、ホームレス向けの緊急一時保護センターはキャパシティが小さく、450名程度しか受け入れられない。自立支援センターに滞在できるのも原則2ヵ月までだ。

 そうした一方、増える空室に悩んでいるのが民間の賃貸住宅である。

 総務省の「平成20年住宅・土地統計調査」によると、賃貸住宅の空き家は全国に409万戸。3大都市圏全体の空き家率も総住宅数の12.1%に上っている。

「『アパートがガラガラで困り果てている。このまま家賃収入が減れば飢え死にしてしまう』ともやいに駆け込んでくる大家さんまでいるほどです。こうした民間の住宅ストックを活用しない手はありません。具体的には自治体やNPOが借り上げ、困っている人に格安で貸し出すという方法が考えられます」(稲葉さん)

ワーキングプアの救世主!?
月3万5000円の都心アパート

東京都・四谷にある『自由と生存の家』。住宅部分に、フリーランスの組合「インディーユニオン」が併設されている。「暮らしだけでなく、仕事や活動の拠点になれば」(清水さん)

 実際にこうした方法で誕生した格安の賃貸住宅がある。東京・四谷にある「自由と生存の家」だ。

 東京メトロ丸ノ内線・四谷三丁目駅から徒歩2、3分。新宿通りから裏路地に入ると、2棟の古いアパートが目につく。

 家賃は4畳弱の個室が3万5000円~。礼金はなく、敷金は積み立て方式で、月に3000円~だ。個室以外に風呂、トイレ、キッチンが共同のフロアと、独立した1DKがあるフロア、ルームシェア式のフロアがある。

 運営しているのは、フリーター全般労働組合の有志が立ち上げた「自由と生存の家実行委員会」。