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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

世界の最先端だった江戸時代の通貨・金融システム

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第20回】 2015年10月7日
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江戸時代にすでにあった変動相場制

 時代劇でみられるように、江戸時代には金(小判:両)と銀(匁〈もんめ」)と銅(銭:文)の3つの通貨から成り立っていました。幕府が通貨発行権を独占しており、17世紀初頭の公定相場では、一応、50匁=4000文となっていましたが、実際には3通貨の相場は「変動」していました。つまり、国内で変動相場制のメカニズムが存在していたのです。それは、需給によって日々変動していました。例えば、金の産出量が増えると、金が余り気味になり、銀に対する値段が安くなりました。

 また、金(貨)には大判と小判がありましたが、大判は記念品(贈答品)で、実際に使われることはあまりありませんでした。さらに、銀は(これが特徴なのですが)重さの単位として使われました。これを専門用語では秤量(ひょうりょう)貨幣といいます。そのため、重さの単位である「匁」が使われていたのです(1匁=3.75グラム)。銀は貴金属としての価値を重視したモノサシとしての役割を果たしていました。

 また、「東国の金遣い・西国の銀遣い」という言葉がありましたが、江戸を中心とした東日本では「金」が主として使われ、大坂(大阪)を中心とした西日本では「銀」が主として使われました。これは東日本には佐渡金山などの金の産地が比較的多く、西日本では石見銀山などの銀の産地が比較的多かったからです。また、西日本では昔からの貿易で、中国やスペインから入ってきた銀貨の影響もありました。このとき、例えば、江戸の景気が良くなったり、江戸に行く人が増えてくると、江戸で使う金の必要性が増し(金を購入し)、金の値段が変動して高くなりました。

「両替屋」「金相場立会所」そして「先物市場」

 金・銀・銅の他に「米」もまた通貨としての役割を果たしてきました。よく武士の年棒は「何万石」などといって米の量(出来高)で決められていました。そして、大名は「蔵」に米などを保管して、おカネ(貨幣)が必要になると換金して使っていました。

 江戸時代は大坂が「天下の台所」として、日本の経済の中心地でした。大名は自国で得た米を「(米)市場」がある大阪で「銀」に換金し、その銀を必要に応じて、金に交換していました。そのため、多くの「両替屋(現在の銀行)」が存在していました。(両替屋は預金も受け入れていました)さらにはその両替屋は大坂北浜の「金相場立会所」で売買を行い、相場を決めていました。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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