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ニッポン 食の遺餐探訪

赤身肉ブームを牽引する短角牛ブランドの凄さ

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第35回】 2015年10月7日
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全国的に見ても放牧の牛は少ない(柿木畜産提供)

 巷ではこのところ牛肉ブームが続いている。牛肉という明治以降の食文化が身近な存在になったということかもしれない。

 かつての日本人にとって牛肉は贅沢品だった。日本が豊かになるにつれて牛肉の消費量は順調に伸びていく。大きな転換点となったのは1991年の牛肉の自由化だ。

 それにより安価な輸入牛が店頭に並ぶようになり、対応を迫られた国内の生産者は霜降り肉の生産に力を入れた。現在、肉用種の90%を占める『黒毛和種』はその代表的な品種で、多くのブランド牛が世に送り出された。和牛には黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種(短角牛)の4つの品種があるが、和牛といえば黒毛和牛がイメージされるのはそのためである。

 一方、ここ最近、需要が高まっているのが『赤身肉』だ。健康志向や嗜好の変化で脂の多い霜降り肉より、肉の旨味が味わえる赤身肉がいい、という人が増えた。市場の価格差も以前ほどではなくなりつつある。

 今回、訪れた岩手県、久慈市山形町にある柿木畜産。代表の柿木敏由貴さんからお話を伺った。12軒の生産者によって育てられる『山形村短角牛』は赤身の美味しさに定評があり、プロの料理人からの人気も高い。

頭数は和牛全体の1%未満
短角牛ブランドの魅力

 短角牛のルーツは元々、物資輸送に使われていた日本の在来種の南部牛だ。牛はこの地方の人達にとって重要な労働力で、沿岸部から内陸まで塩を運ぶためにも用いられた。

 「昔、南部藩はたたら鉄も豊富だったそうです。牛たちがそれを背負って新潟、燕三条まで行ったという話も残っています」

 1870年頃から導入された米国のショートホーンという品種とこの日本の牛を交雑することで、短角牛の基礎となる牛がつくられる。

 短角牛は現在でも北東北(と北海道)が主な生産地の土地に根付いたローカルな存在だ。岩手県の飼育頭数は約4000頭、全国でも6400頭ほどで、和牛全体の1%に満たない。

 「元々、数の少ない牛なのですが輸入自由化の影響もあってずいぶん減りました。その頃から黒毛和牛との価格差が広がりました。同じ赤身肉ということで輸入肉とバッティングしてしまうからです」

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


ニッポン 食の遺餐探訪

和食を世界遺産に、という動きが農林水産省を中心にはじまっている。日本料理はここ十年余りの世界的な流行になり、外国の料理人の多くも関心を持っていて、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を理解できていないのではないか。そこでこの連載では、日本の食を支えている道具や食材をつくっている生産者、職人を訪れて、私たち日本人が知らない日本の“食の遺餐”を紹介していく。 

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