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モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫

VW不正騒動が突き付けた課題、
燃料電池車はエコカーの本命になれるか

佃 義夫 [佃モビリティ総研代表]
【第15回】 2015年10月9日
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VW不正問題が突き付けた課題
環境規制に業界はどう対応すべきか

VWの不正問題は、世界的な波紋を広げた。今後自動車各社は、環境規制の強化にどう対応するか。次世代エコカーの本命と言われるFCV(燃料電池車)の可能性を考察しよう Photo:TOYOTA

 独VW(フォルクスワーゲン)によるディーゼル車排ガス試験での不正問題が自動車業界に激震をもたらし、その成り行きが世界的な問題にまで拡がっている。

 VW問題はVW固有の不祥事であると考えたいが、ある意味で自動車業界全体に大きな課題を突き付けた。環境規制強化に対し、自動車業界が現実的な市場対応と先行開発技術投入の間に横たわるギャップをどう埋めていくか、ということだ。それは、環境と安全の二大テーマを掲げる同産業における、環境とエネルギーの関連性にも結びつく。

 20世紀は化石燃料の大量消費時代だったが、そこではガソリン車・ディーゼル車は主役だった。21世紀は石油代替燃料への転換が進み、水素社会化に伴い燃料電池車(FCV)へと主役が交替して行くことが期待されている。パワートレーンが多様化しているなか、次世代のエコカーであるFCVがそこから抜け出すのはいつか。今回はそれを考察したい。

 先日筆者は、日本自動車会議所主催で開催された研修セミナー「水素をめぐる現状と将来展望~自動車・インフラ・水素社会について」のパネルディスカッションで、コーディネーターを務めた。

 同セミナーは、トヨタ自動車の河合大洋・技術統括部主査が「FCVの開発と初期市場の創出」、岩谷産業の宮崎淳・常務執行役員水素エネルギー部長兼中央研究所副所長が「水素・インフラに関する現状と将来の展望~イワタニの水素インフラ整備の取組み~」というテーマで講演した。また、両講師と筆者による「来たるべき水素社会の展望」というパネルディスカッションも行った。

 燃料電池車(FCV)と水素社会――。言うまでもなくFCVとは、燃料電池で(水素と酸素の化学反応によって)つくり出す電気を使って、モーターを回して走る自動車である。つまり、基本的には電気自動車(電動車)である。火力発電所などで生まれた一次電気を使い、電池とバッテリーだけでモーターを回して走るのが電気自動車(EV)だ。現状ではEVに航続距離の短さと長い充電時間という制約があるのに対し、FCVは走行時に水しか排出せず、航続距離と水素充填時間も内燃機関車と遜色がない。そこが、「FCVはサスティナブルなモビリティ社会に貢献する究極のエコカーとして高いポテンシャルがある」(加藤光久・トヨタ副社長)という見方に繋がる。

 そもそも水素社会実現への意義とは何だろうか。それは石油への依存度を軽減したエネルギー・セキュリティ(安全)の向上にある。化石燃料の枯渇が叫ばれた時期もあったが、最近のシェールオイル革命や現実的な石油埋蔵量の査定が進み、枯渇は少なくとも2030年代以降という認識へ変化している。

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佃 義夫[佃モビリティ総研代表]

つくだ・よしお/1970年、創刊86周年(2014年2月時点)の歴史を持つ自動車産業日刊専門紙『日刊自動車新聞社』入社、編集局に配属。自動車販売(新車・中古車)・整備担当を皮切りに、部品・物流分野を広域において担当した後、国土交通省・経済産業省など管轄官庁記者クラブ、経団連記者クラブ(自工会分室)と、自動車産業を総合的に網羅し、専任担当記者としてのキャリアを積む。その後、該当編集局内における各分野のデスク・論説担当編集局次長を経て、出版局長として自動車産業オピニオン誌『Mobi21』を創刊。以降、取締役編集局長・常務・専務・代表取締役社長を歴任。45年間の社歴全域で編集・出版全体を担当、同社の「主筆」も務める。日刊自動車新聞社を退任後、2014年に「佃モビリティ総研」を立ち上げ、同総研代表となる。


モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫

「自動車」から「モビリティ」の時代へ――。クルマ業界が変貌を遂げつつあるなか、しのぎを削る自動車各社。足もとで好調を続けるクルマ業界の将来性と課題とは、何だろうか。日本の自動車産業・クルマ社会をウオッチしてきた佃義夫が、これまでの経験を踏まえ、業界の今後の方向・日本のクルマ社会の行方・文化のありかたなどについて、幅広く掘り下げ提言していく。

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