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格差社会の中心で友愛を叫ぶ

“抜け道”だらけで問題山積!?
派遣法改正でも「派遣切り」が終わらないワケ

西川敦子 [フリーライター]
【第18回】 2010年4月23日
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 派遣業界が大揺れだ。

 帝国データバンクの調べによれば、2009年度の人材派遣会社の倒産件数は88件。過去最悪の結果となった。同社調査部の阿部成伸さんは次のように説明する。

 「派遣先での仕事そのものが減っている状態ですね。このため、自社で派遣社員の給与を支払う常用型雇用の人材派遣会社は、とくに重い負担にあえいでいる。中でも設計・開発系は深刻なIT不況にさらされ、厳しい経営環境と言えます。

 今のところ、倒産企業のほとんどが小規模、零細派遣会社ですが、今後は中規模、大企業で経営が傾くところが出てくるのでは。大手のうち、金融会社やメーカーが出資する資本系は安泰と言えますが……」

 そんな中、今月16日に労働者派遣法改正案が衆議院本会議で審議入りした。その是非をめぐり、さまざまな立場から議論が飛び出し、白熱化している。

 「派遣で働けなくなったら生活に困る」「規制強化が進めば企業の海外移転が進む」などの声もあれば、「改正案は抜け道だらけだ」とさらなる規制強化を望む意見もある。

 たしかに、就職へのハードルが低くライフスタイルにあわせて仕事ができる派遣は、多くの人にとって都合のいい働き方だ。同時に、グローバル競争にさらされる企業にとってもありがたい存在である。それでも、「都合のいい働き方」ゆえに翻弄されてしまう人々も中にはいる。

 “派遣混迷時代”の今、体験者の声に耳を傾けてみることにした。

“撤回”でも切られた派遣社員たち

 「あれは“撤回”なんかじゃなかった」

 自動車メーカーの工場で期間従業員として働いていた三浦慶範さん(28歳)は当時を振り返り、こうつぶやく。

 “期間従業員の解雇撤回”

 新聞にこんな見出しが躍ったのは一昨年のこと。会社はリーマンショックを契機に減産を余儀なくされたため、期間工と派遣社員の大量解雇を予定していた。“撤回”が報道されたのは、解雇予定日のわずか2日前だった。

 だが、じつはこのとき会社側が提示してきた選択肢は2つあった。ひとつは「期間満了までの賃金8割と満期慰労金を受け取り、合意の上で退職する」。もうひとつは「契約期間満了まで休職し、賃金6割と満期慰労金を受け取る」。多くの従業員たちは前者を選ぶしかなかった。

 「それに対象となったのはあくまで期間従業員だけ。派遣社員たちはみんな切られてしまいました」

 いつでも使えていつでも切れる。それが派遣社員だ、と彼は言う。

 三浦さんがそう考えるのも無理はない。なにしろ、派遣社員になって以来、さんざん派遣元と派遣先企業に振り回されてきたのだ。

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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