60歳時の住宅ローン残高を
把握していますか?
前回は「老後貧乏から下流老人に転落する分かれ目はどこか」と題して、「制度を知る・利用する力」と「少し先を想像する力」がないと、老後貧乏から下流に転じる可能性があると書いた。
「制度を知る・利用する力」があれば、困ったときに社会保障制度や福祉制度のサポートを受けることができる。男性は、「知る・利用する力」に加えて、「助けて」と声を出せる自分を作っておくことも必要だ(威張らずに)。
「少し先を想像する力」は、5年後、10年後、もしくは定年後の「自分のお金周りを予測する力」のこと。割り算とかけ算ができれば、老後の蓄えや年金収入をムダに減らさなくてすむ。
今回は、定年後も続く住宅ローンが持つリスクについて考えてみたい。住宅ローンを持つ読者の方、次の質問に即答できるだろうか。
(1)住宅ローンを完済する年齢はわかりますか?
(2)60歳時の住宅ローン残高を知っていますか?
完済年齢については「うん、わかる」という人が多数と思われる。35歳で35年返済のローンを組んだとしたら、その時に「70歳までのローンかぁ。退職金で返せば何とかなるだろう」と考えていただろうから覚えているはずだ。妻が知らぬ間に繰り上げ返済をしていたら、当初より完済年齢が数年早まっているかもしれないが、それはそれでラッキーなこと。
一方の60歳時のローン残高については、答えられる人はかなり少ない。全期間固定金利の住宅ローンなら、返済予定表で完済までの毎月のローン残高が載っているので把握が可能。しかし、現在ローンを持っている人の大多数は、変動金利型や一定期間の固定金利型だ。その場合の返済予定は、「金利が固定されている期間」だけの記載のため、ほとんどの人が60歳時のローン残高を答えられない。
定年後も返済が続くローンを、退職金をアテにして借りるにもかかわらず、退職時の残高を知らないのは、人生における大きなリスクである。さらに、ほとんど人が、ローンを組む段階で勤務先の退職金水準をご存じない。仮に60歳時のローン残高が1500万円で、退職一時金が1800万円だとすると、差し引き300万円しか老後資金に回せなくなるのである。
他に老後資金の蓄えがないと、老後貧乏からあっという間に下流老人に転落するかもしれない。