中国の景気減速が続いている。今年7~9月期の実質GDP成長率が6.9%と、ついに7%を割り込んだ。8月には、突然の人民元切り下げで中国経済に対する見方が一気に悲観的になり、世界同時株安を引き起こしたことは記憶に新しい。果たしてこの数字を市場はどう評価したのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

中国の習近平国家主席にとって経済政策は最大の課題。外遊先でも経済協力をまとめ、中国への投資拡大につなげようと必死だ Photo:REUTERS/アフロ

 8月24日月曜日の中国版ブラックマンデー(中国経済の減速懸念をきっかけに起きた世界同時株安)の再来はなかった。10月19日月曜日、中国の実質GDP成長率が7%を割り込んだと発表された後も、市場は大きな混乱もなく平静を保った。6.9%という水準は、リーマンショック直後の2009年1~3月期(6.2%)以来のことだ。

 景気減速の主な要因は、生産と投資が低迷していること。特に製造業が不振で、9月の鉱工業生産(単月)は前年同月比5.7%増にとどまり、増加幅は前月から0.4ポイント低下。9月の発電量も前月の1%増からマイナスに転じ、同3.1%減となった。

 1~9月の固定資産投資は前年同期比10.3%増と、企業の設備投資の減退と不動産投資需要の低迷により、1~8月から0.6ポイント減速した。

 それでも市場に混乱が起きなかったのは、6.9%という水準が想定の範囲内であり、織り込み済みだったからだ。

 中国政府は今年3月の全国人民代表大会(全人代)で、消費主導の安定成長を目指す新常態(ニューノーマル)を掲げ、実質GDP成長率の目標を7%前後(前年は7.5%)に引き下げた。7~9月の成長率もこの目標の範囲内ではある。むしろ、市場でのコンセンサス(最も多い予想値)の6.8%より高いとして、好感する向きもあったほどだ。

 ただし、これで中国経済に対する懸念が払拭されたわけではない。過度な悲観論が後退しただけで、見方は分かれている。

 第一生命経済研究所の西濱徹主席エコノミストは、「最悪期は脱した」とみる。9月単月の輸出額は、前月までと比べてマイナス幅が減り、底入れの兆しが見えてきた。消費も堅調で、9月単月の社会消費品小売総額は前年同月比10.9%増となった。

「(成長率が落ちても)中国で雇用危機が起きていないのは、サービス産業が雇用の受け皿になっているからだ」。SMBC日興証券の肖敏捷シニアエコノミストは、サービス産業が景気を下支えしていると分析する。産業別GDP構成比を見ても、すでに第3次産業が51%に達している。

 話題になっている訪日中国人の“爆買い”も、中国人消費者の購買意欲の高さの表れだろう。