Q.英誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「世界大学ランキング」で東京大学が43位となり、26位のシンガポール国立大学にアジアトップを奪われました。日本の大学がグローバルで戦ううえで求められていることとは何でしょうか。

順位はまぁどうでもいいけど
英語力の向上と研究に没頭できる環境づくりがポイントかな

A.そもそもこんなランキング気にしても仕方ないところはありますが、まずは英語への対応でしょうか。

 やはり、世界共通言語である英語が自由に使える地域にある大学は有利です。もちろん東京大学でも、大学院レベルになれば論文は英語で書きますし、専門用語を交えた簡単な会話は英語でも問題ありません。しかし、日常生活のほとんどはどうしても日本語になってしまいます。こうしたことが英語力の向上の一段のハードルになっているのでしょう。

 また大学院以降の院生に関しては、研究に関係のないアルバイトなどに時間を取られていることが日本の大学の場合は多いです。

 一方で、アメリカの大学では、学生の研究課題が多くて、アルバイトに精を出すこと自体が事実上不可能ということもありますが、一方で教授の行っている研究を、大学院生が無償ではなく有償で手伝うことにより、それ以外のアルバイトをしなくて良い体制が整っている大学も少なくありません。

 日本の大学も、学生がもっと研究に没頭できるような体制を作る必要があるでしょう。

Q.素粒子物理学を発展させた東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長がノーベル物理学賞を受賞しました。科学技術の予算が基礎研究から応用・実用化研究にシフトするなか、この受賞はどのような意味を持つのでしょうか。

世の中の関心が基礎研究に集まることは大歓迎
起業家はもっと資金援助を増やすべきでは

A.今回の受賞により、ハイパーカミオカンデやX-MASS、さらに日本に建設が予定されている国際リニアコライダーに対する世間の関心が高まり、予算が獲得しやすくなるとは思います。

 小惑星「イトカワ」への苦難の旅が共感を呼んだ小惑星探査機「はやぶさ」のおかげで、イトカワとは違ったタイプの有機物リッチな小惑星「Ryugu」に向かう「はやぶさ2」の予算が獲得できたような感じです。

 世間とは移ろいやすいものです。わかりやすい成果が出ると国民の共感が得られ予算が獲得できます。逆に話題に上がらなくなると事業仕分けなどで削られてしまいます。

 何の役に立つのかわからない研究に関しては、本来は科学技術の知識豊富な“パトロン”がお金を出すというのが理想的です。実際、世界にはロックフェラーやビル・ゲイツのような大富豪が作った研究財団がいくつもあります。

 今後は、IT起業家の成功者が基礎研究にどんどん投資をする時代がくるのではないかと考えています。