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鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

1億総活躍のトリガーは
国民的な「学び直し」にあり

鈴木寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]
【第40回】 2015年10月22日
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政権の新たなキャッチフレーズとなった「1億総活躍」を実現するためには、何よりも国民的な「学び直し」が必要ではないか

 こんにちは、鈴木寛です。

 今回の内閣改造で、政権の新たなキャッチフレーズが「1億総活躍」になりました。人口減少の傾向が進んでいく中で、21世紀に入ってからの我が国の1人あたりのGDPは先進7ヵ国の下位グループに低迷し、労働生産性(=GDP/就業者数)に至っては7ヵ国で最下位の状況が続いています。

 移民政策を現実的に取ることが難しい以上、女性も高齢者も頑張って行かねばならない、という大きな方向性については、私も同意します。ただ、我が国を取り巻く経済社会構造の大転換を踏まえると、全国津々浦々まで「活躍」の波を広げていくには、何が必要でしょうか。

 そのトリガーとなるのは、やはり人への投資、「一人ひとりの学び」であるというのが私の考えです。この連載で、私はグローバル人材育成や高大接続などの改革を何度も取り上げて参りましたが、まさにその施策とも密接に絡んできます。文部科学省もこの2年、「地方創生」の施策として、地方大学の活性化、学生の地元定着や地域での高度人材育成に向けて本腰を入れています。「1億総活躍」のために必要な人材の底上げ、ことに地方における高度人材教育の意義について、今回は書いてみたいと思います。

バラマキだった過去の地方活性策
自活の時代は人への投資が必要

 日本はこの40年、「日本列島改造論」を掲げた田中角栄政権から本格化した「地方活性化」において、ハード重視で巨額のモノ投資を行ってきました。バブル時代には、田中角栄の流れを汲む竹下政権において、全国の自治体に1億円をばらまいたこともありました。

 青森県の自治体で純金のこけしが買われて全国的な話題になりましたが、しかし地域衰退の最大の理由である人口流出は止まらず、結局はリターンなき投資に終わります。地方の債務残高は200兆円、GDP比の約40%となり、単に地方の借金が膨らむだけで終わりました。金のこけしが話題になった頃、私は通産省から国土庁に出向して現場におりましたが、乾いた砂に水をまいているような手法、それも税金を使っていたことに、忸怩たる思いでした。

 結局、この40年の教訓として残ったのは、ハード偏重の投資では人口減少、高齢化による街やコミュニティの衰退に歯止めがかからないということ。「人」にも投資をしなければならないことがわかりました。

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鈴木 寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]

すずき・かん/元文部科学副大臣、参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。14年から国立・私立大の正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号として東京大学、慶応義塾大学の教授に就任。同年、日本サッカー協会理事。15年2月から文部科学大臣補佐官として大学入試改革などを担当している。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

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