成功体験は全員で!
コンテストで入賞し続ける秘訣とは

―自治体や企業が主催するコンテストにも盛んに応募されていますね。学校の外で評価されることを意識されているのですか。

沼田 うちのクラスでは、子どもたちが取り組みたいことをプロジェクトとして進めています。外部のコンテストに応募するのもそのプロジェクトの一つです。いまは28のプロジェクトが進行していますが、1人だいたい五~六つのプロジェクトを掛け持ちしている感じですね。実は、コンテストで入賞して、その賞金を使ってみんなで「ホテルでディナーを食べる」という目標があるんですよ。なるべく確度の高いコンテストに応募するために、コンテストを調べるためのプロジェクトも立ち上げていて、一覧表にして片っ端から取れそうなやつを割り振っていますね。絵のうまい子には絵画コンンテスト、文章が得意な子には文章力を試すコンテスト、というように。

 ホテルでディナーを食べることが目標なので、誰が賞を取るかは問題じゃないんです。クラスでも個人でも、入賞して賞金を獲得するとクラス全員が本気で喜ぶ。絵のうまい女子が絵画コンクールに入賞したら、全然関係ない男子たちが抱き合って喜ぶんです。「おまえだけずるいな」とか「自分の方がうまいのに」とか、そういうねたみは一切ない。入賞した子もみんなに向かって「ありがとう」と言います。もちろん落選するものもありますから、その時はまた全員で悔しがる。そして次のチャンスで失敗しないように、いろんな知恵を出し合うんです。一人一人が全体の目標に向かって努力し、成果を共有することが自然にできていると思います。

―それは教科書では学べないことですね。しかし、子どもの活動でお金が動機となることについて、社会的な抵抗はありませんか。

沼田 賞金そのものが目的じゃないことを、僕と子どもたちの間では共有しています。お金はみんなでディナーを食べるという最終的な目標を達成する上で必要な要素にすぎません。目標を決め、努力して、その結果として得たお金で自分たちの目的を果たす。それを理解した上で子どもたちは活動しています。

 お金を扱うっていうことだけで、いろいろと批判が出たりする風潮は分かります。ただ、こうした活動は子どもたちが、お金の本当の価値や使い方を学ぶ機会であり、社会や経済がどうやって回っているかを実体験できる場でもあるんです。

 子どもの世界だからといって、学校と学校以外の常識に過度に線引きをするのは、本当はおかしな話だと思いますね。