「これで新日鉄に対して4勝3敗の勝ち越しとなった」(JFEホールディングス関係者)
大手鉄鋼メーカーの2009年度決算が出揃った。リーマンショック以降の景気低迷による大幅減産や販売価格の下落、さらに中国などの新興国の需要回復による世界的な原材料高などにより、鉄鋼各社共に台所事情は厳しい。
こうしたなかで注目されるのが、鉄鋼業界最大手の新日本製鐵と2位のJFEホールディングスの実力接近である。
新日鉄の売上高は3兆4877億円。前年度比26.9%の大幅減だが、それでもJFEの2兆8443億円(前年度比27.2%減)を上回り、売り上げ規模ではなんとか面目を保った。
ところが利益額で見ると、新日鉄の経常利益は118億円(同96.5%減)で、一方のJFEは692億円(同82.7%減)。新日鉄はJFEに大きく水をあけられている。
旧川崎製鉄と旧NKKの経営統合に伴うJFEホールディングスの設立は02年9月。その後の新日鉄とJFEの利益額の星取り表を見ると、08年度時点で3対3の引き分け。09年度でJFEが勝ち越したことになる。新日鉄は02年度以来、7年ぶりの最終赤字(115億円)にも転落した。
主力の鉄鋼事業に関しては、もともと新日鉄よりもJFEのほうが利益率は高い。加えて、JFEはコスト削減の徹底によりエンジニアリング、造船事業では過去最高益を達成。鉄鋼事業の大幅減を下支えした。
今後も新日鉄とJFEの激しい首位争いは続きそうだが、世界の鉄鋼市場においては、もはや「下位メーカー」同士の局地戦にすぎない。
両社の粗鋼生産量は昨年、最大手のアルセロール・ミタルはおろか、中国大手の河北鋼鉄集団、宝鋼集団、武鋼集団、鞍本集団、さらに韓国のポスコにも追い抜かれた模様だ。
収益面も厳しい。ポスコの売上高は36兆8550億ウォン(約3兆1000億円、09年12月期)。新日鉄やJFEとほぼ同じ水準でありながら、経常利益は3兆3423億ウォン(約3000億円)で、国内2強の合計額のじつに3倍以上を稼ぎ出す。
ポスコは潤沢な資金力にモノを言わせてインド、インドネシアで一貫製鉄所の建設を計画するなど海外進出にも積極的。新日鉄、JFEも海外の一貫製鉄所建設や国内外の再編といった大勝負に打って出ない限り、その存在感はますます薄れることになりかねない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)