10月26日から29日まで開かれた中国共産党第18期中央委員会第五回全体会議(以下第18期五中全会と略)では「国民経済・社会発展の第13次五ヵ年計画策定に関する中共中央の提案」が採択され、次の5年間における習政権の経済運営の指針が決まった。

 第13次五ヵ年企画の最終年度が2020年であるため、習政権がいかにして「中国の夢」に向けて、小康社会(ややゆとりある社会)の完成に導くか、その道筋が明らかになるため、多くの注目を集めた。今後5年間の習政権はどのような経済運営をするか分析を試みる。

習政権の経済政策の特徴は
ブレない「戦略的不動心」にある

「中国の夢」を実現する上でカギとなるのは、経済政策である。習政権の経済政策の大きな目標は、2013年11月に開かれた中国共産党18期中央委員会第三回全体会議(以下第18期三中全会と略)で定められた「政府の役割を小さくして、市場経済の役割をさせ、経済に活気を与える」として、中国経済を高度成長段階から安定成長段階にバージョンアップさせるというものである。この方針の下、国有企業改革や行政許認可改革、自由貿易区などの改革を推進してきた。

 また習政権の経済政策を語る上で「戦略的不動心を保ち、情勢の変化に応じて計画する」という言葉は重要だ。これは習総書記が浙江省視察のときに強調した言葉で、当面の経済政策の基本的方針である「安定的なマクロ経済政策」を変えることはないが、それにこだわり続けるのではなく、経済情勢が悪化したら、適時調整政策をとるということである。

 習政権の経済政策の特徴をまとめると、次の四つである。

 第一に、民間の力を大いに活用するということである。これまで公益性の強いインフラ事業は公的セクターが行ってきたが、公的セクターの事業運営は効率が悪い。また、民間の生産能力が過剰であるため、それを生かすために公益性が非常に強いもの以外は民間の力を活用しようとしている。

 第二に、新たな経済の発展段階に応じた政策をとりつつあるということである。昨年習総書記は河南省視察の際の講話で「新常態(ニューノーマル)」という言葉を使い、昨年の中央経済工作会議でもその言葉が登場し、今後の経済政策の基調となった。それは安定成長路線に転換し、経済構造の調整をはかるというものである。

 第三に、安易な資金投入ではなく、既存資金の有効活用を目指している。2008年から09年は世界的大不況の影響で大規模な公共投資を行って景気浮揚を狙ったが、結果として財政赤字を拡大させた。だが、習政権になってからは「節約励行」を提唱し、公務員に「身を切る」ことを求める一方で、財政面での改革にも着手し、財政に眠っている資金を「活性化」し、それを民生に配分するようになった。