今年5月に成立した医療制度改革法では、インセンティブ制度や患者申出療養、紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担などの導入が決められ、来年以降、順次、実施される予定になっている。

 この法改正の大元にあるのが、2013年8月に発表された「社会保障制度改革国民会議」の報告書だ。ここでは、今後の日本の社会保障制度のあるべき姿が描かれ、これを受けて作られた「プログラム法」で社会保障制度改革のおおまかなスケジュールが示された。

 改革法は、国民会議の報告書とプログラム法に沿って作られており、2017年までは医療制度見直しのオンパレードとなる。

 だが、先行して見直しが進んでいる制度もあり、現役世代の高額療養費の自己負担限度額はすでに今年1月に細分化されている。それに伴い、介護費用と合算できる「高額医療・高額介護合算療養費」は、昨年8月分から段階的に限度額が見直されている。

 同居している親が介護保険を利用している場合、合算療養費の対象になり自己負担を抑えられる可能性もある。今回は、健康保険と介護保険の自己負担限度額の改正ポイントを押さえておこう。

負担増だけではない
低所得層の負担は軽減

 前述の社会保障制度改革国民会議の報告書は、現役世代に過度な社会保障費の負担を押し付けないために、高齢者にも能力に応じた保険料や窓口負担を求める内容となったが、その一方で繰り返し述べられているのが「低所得層に配慮」という言葉だ。

 これまで、日本での社会保障費は高齢者を一律に優遇していきたが、若年層にも貧富の格差が広がり、社会構造が変化しているなかで、経済的に余裕のある高齢者には応分の負担はしてもらおうというものだ。

 そのため、今回の医療・介護の制度改革では、一律に負担を引き上げるようなことはしていない。富裕層の自己負担額限度額は引き上げる一方で、低所得層の負担は据え置かれたり、反対に引き下げられたりしているのが特徴だ。

 2014年8月~2015年8月までの間に、健康保険の高額療養費、介護費の高額介護サービス費、両者の高額医療・高額介護合算療養費は次のように改正された。とくに注意したいのが、親と同居するなどで70歳未満と70歳以上の人が同一世帯にいる場合だ。