金融サービスでIT企業が金融機関に取って代わる日が来るのか

 フィンテックについて、日本ではバラ色の未来が訪れるような報道が多い。しかしデジタル革命は、一般に破壊的な影響力を持つ。金融業が情報産業である以上、甚大な影響を受けないはずはない。

 マッキンゼーは、9月に発表した『グローバルバンキング・アニュアルレビュー』の2015年版において、今後10年間で、フィンテックによって銀行の利益が60%減少し、売り上げが40%減少すると予測した。

 こうした大変動に対処するため、欧米の金融機関は積極的な取り組みを行なっている。日本の金融機関はどうするのか?

市場規模は4年で2倍以上に拡大
スマートフォンを用いた決済サービス

 フィンテックとは「ファイナンス・テクノロジー」の略である。金融とIT(情報技術)との融合による新しい技術革新を指す。

 ITの影響が、金融分野にも及んできているということだ。ただし、そうした変化は、だいぶ前から生じている。例えば、電子マネーの一種であるSuicaなどは、すでに大都市に住む日本人の日常生活に不可欠なものになっている。

 最近言われるのは、スマートフォンを用いた新しいサービスが中心である。とくに、一般の消費者などが便利に使える新しい決済サービスだ。

 これらは、スマートフォンやタブレット端末をクレジットカードの決済端末にするサービスであり、「モバイル決済」と呼ばれる。アメリカを中心に大きな広がりを見せ始めている。

 アップルは昨秋、決済サービス「アップルペイ」を開始した。クレジットカードの情報がiPhone6の中に入っているので、カードを持ち歩く必要はない。

 グーグルは「グーグルウォレット」と呼ばれる決済アプリをスマートフォンに標準搭載するよう、AT&Tなどの大手通信会社と提携している。

 ツイッターの共同創業者兼会長のジャック・ドーシーが2009年に創業した「スクエア」は、スマートフォンに装着した簡易リーダーで手軽にカード決済ができるサービスだ。これを中小事業者などに提供している。