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シンプルに考える
【第46回】 2015年12月7日
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森川亮

モノづくりは「技術者」より「○○」に主導させる
LINE元CEO・森川亮の「考え方」

「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を考え抜く。そして、本当に大切な1%に100%集中する。シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。LINE(株)CEO退任後、ゼロから新事業「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏は、何を考え、何をしてきたのか?本連載では、待望の初著作『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)から、森川氏の仕事術のエッセンスをご紹介します。

1967年生まれ。筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。コンピュータシステム部門に配属され、多数の新規事業立ち上げに携わる。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。03年にハンゲーム・ジャパン(株)(現LINE(株))入社。07年に同社の代表取締役社長に就任。15年3月にLINE(株)代表取締役社長を退任し、顧問に就任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel(株)を設立、代表取締役に就任。著書に『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)がある。(写真:榊智朗)

なぜ、デザイナーが重要なのか?

 商品開発には大きく二つのやり方があります。

 ひとつは、技術的アプローチ。その代表格がgoogleです。人々が欲しがるかどうかはわからないけれど、エンジニアが「面白い!」と思うものをとにかく世に出して、その中で当たったものをビジネス化していく。優秀なエンジニア集団であり、かつ巨額の開発費をもつgoogleならではの手法です。

 もうひとつが、デザイナーが主導するアプローチ。スティーブ・ジョブズが典型ですが、人々が求めている「価値」を突き詰めて、それをデザイナーが主導して具現化する手法です。ユーザーが操作するときに心地よさを感じてもらう。その「感性」にフォーカスする手法、と言ってもいいでしょう。

 LINE株式会社のアプローチは後者です。
 なぜか? インターネット市場が成熟したからです。市場が成熟化するとは、すなわちユーザーが限りなく広がったということ。「ギーク」と呼ばれるITに詳しい一部の人々ではなく、ITにそれほど詳しくない「普通の人々」がユーザーになった。

 それを加速させたのがスマートフォンの普及です。ノートパソコンが普及し始めた当時、多くの経済学者はパソコンを一人一台持つ時代が来るだろうと予測しました。しかし、そのような時代は来ませんでした。

 ところが、スマートフォンがそれを現実のものにしました。スマートフォンは、24時間、いつでもインターネットにアクセスでき、どこにでも持ち歩くことができる、いわば小型のパソコン。その手軽さから、あまりパソコンを使わなかった女子高生、主婦、高齢者まで、一人一台スマートフォンを持つ時代になったのです。

 だから、デザイナーが商品開発を主導することによって、「普通の人々」でも簡単に心地よく使えるものをつくり上げなければ、受け入れてもらえなくなったのです。

 実際、googleのサービスは、まずギークの間で流行った後に、一般に広がるケースが多いですが、LINEはリリースと同時に若い女性を中心に一気に広がっていきました。こうした現象は、これからますます増えていくと確信しています。

「技術偏重」が日本の製造業を苦しめている

 だから、LINE株式会社ではデザイナーがサービス開発を主導するケースが多い。
 もちろん、優秀なエンジニアの存在はきわめて重要です。しかし、エンジニアがリーダーシップをとると、どうしても機能過多になりがち。最新の技術や自分が得意な技術を盛り込もうとしてしまう。そもそもエンジニアはリテラシーが高いですから、彼らにとって当たり前のことでも、「普通の人々」からすると難解になってしまう。つまり、ユーザーのニーズから離れてしまうことがあるのです。

 そこで、重要になるのがデザイナーの存在。デザイナーというと、綺麗なレイアウトを考える人というイメージがあるかもしれませんが、それはまったくの誤解です。むしろ、自分の好みの「見た目」にこだわるのは悪いデザイナー。本当に優秀なデザイナーは、自分の好みは一切排除して、「ユーザーにとって使いやすいかどうか」を徹底的に追求するのです。

 言い方を換えると、彼らは機能をそぎ落とすのが得意。まず最初に機能を最低限にまで絞り込む。「これがなければ、プロダクトが成り立たない」というところまで徹底的に絞り込む。それは、ユーザーに提供すべき「価値」の本質を明確にする作業でもあります。そのうえで、ユーザー・テストを繰り返しながら、より使い勝手をよくするために機能を追加していくイメージです。

 僕は、日本の製造業に元気がない理由のひとつは、技術偏重に陥っていることにあるのではないかと感じています。技術中心に考えるから、機能をそぎ落とすことができない。その結果、ユーザーが求めていないものを生み出してしまうのです。

 しかし、そもそも日本人はそぎ落とすことが得意だったはずです。
 短歌、俳句、水墨画……。不純物を徹底的にそぎ落として本質をシンプルに表現することが、日本人の美意識だったのです。技術主導からデザイン主導に切り替えることによって、古来の美意識を取り戻せば、再び日本経済は元気になるのではないかと、僕は考えています。

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森川亮 

1967年神奈川県生まれ。1989年筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。幼少時から一貫して音楽を続けてきたこともあり、音楽番組の制作を希望するもコンピュータシステム部門に配属。本格的にコンピュータを学ぶ。インターネットの登場に刺激を受け、ネット・ビジネスに傾倒。ネット広告や映像配信、モバイル、国際放送など多数の新規事業立ち上げに携わる。仕事のかたわら青山学院大学大学院にてMBAを取得。2000年にソニー入社。ブロードバンド事業を展開するジョイントベンチャーを成功に導く。2003年にハンゲーム・ジャパン株式会社(後にNHN Japan株式会社、現LINE株式会社)入社。4年後には日本のオンライン・ゲーム市場でナンバーワンとなる。2007年に同社の代表取締役社長に就任。2015年3月にLINE株式会社代表取締役社長を退任、顧問に就任。同年4月、動画メディアを運営するC Channel株式会社を設立、代表取締役社長に就任した。


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