回復が進まない世界経済
日本の7~9月期GDPもマイナスに
2008年のリーマンショック以降、わが国や欧米諸国、さらには中国など主要国のほとんどは景気回復を目指して積極的に金融緩和策を取ってきた。思い切った金融緩和策の効果もあり、主要国の経済はわずかずつだが回復傾向が見られる。
しかし、世界経済は期待したほどは回復が進んでいない。むしろ、足元の多くの国で、リーマンショック前と比較して成長率が鈍化している。それに伴い、消費者物価水準は低位水準が続き、企業間の取引価格を示す卸売物価指数は、マイナス圏に沈んでいる国や地域が多い。
わが国では、2013年3月、日銀が異次元の金融緩和策を実施する際、2年以内に消費者物価指数を2%まで引き上げると宣言した。岩田規久男副総裁は、「2%の物価上昇が実現できなければ辞任する」とまで言い切った。
しかし、日銀の宣言から2年半以上経過した現在、消費者物価指数の上昇は2%よりもはるかに低い水準になっている。経済成長率も今年4~6月期にはマイナス1.2%、7~9月期のGDPもマイナス0.8%(年率)と2期の連続のマイナス成長となった。
わが国ばかりではなく、同じく積極的な金融緩和策を取ってきたユーロ圏諸国などでも同様だ。そうした状況を冷静に見ると、現在、実施されている金融緩和策の効果には一定の限界があると考えるべきだ。
一方、金融緩和策によって潤沢に供給された流動性が、投資資金となって株式市場などに流れ込み、世界の主要市場では株価が堅調な展開になっている。市場関係者の一部からは、「過剰流動性によるマネーゲームが発生している」との指摘もある。