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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら
【第13回】 2015年12月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
岩崎 夏海

【『もしドラ』第2弾『もしイノ』試読版 第7回】
「人間って『成功』には鈍感なものよね」

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夢がマネージャーとなった野球部に、新たに二人のマネージャーが入部してきました。彼らを含め五人となったマネージャーたちが、まず学んだのがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』
するとそこには、「イノベーションを起こすための七つの機会」が記されていました。そこで夢たちは、それらを順に学んでいくことにし、まずはその一番目にある「予期せぬことの生起」から考えます。
なぜならそれは、ドラッカーによれば、「一番信頼性と確実性が大きい」ということだったからです。

「人間って『成功』には鈍感なものよね」

 「予期せぬことの生起──か」と、公平が首をかしげながら言った。「そこはおれも読んだんだけど、今のおれたちには関係ないんじゃないか、と思ったんだ」
「どうしてですか?」
「だって、おれたちはまだ、何も始めていないだろ? だから、何も起こっていない。予期していたことはもちろん、予期していないことも。それで関係ないんじゃないかと思ったんだ」
「なるほど……」と、真実は腕を組んで考えた。それから顔を上げると、「とにかく、一度みんなで見てみましょう」と言った。
 真実は、本を開くと次の部分を朗読した。

予期せぬ成功ほど、イノベーションの機会となるものはない。これほどリスクが小さく苦労の少ないイノベーションはない。しかるに予期せぬ成功はほとんど無視される。困ったことには存在さえ否定される。(一四頁)

 そのとき、「あの……」と五月が再び手を挙げた。
「『予期せぬことの生起』って、どういう意味ですか?」
「なるほど、そうね……」と、真実は本に目を落とし、こう答えた。「『予期せぬことの生起』とは、予期せぬ成功、予期せぬ失敗、つまり、予期せぬ出来事が起こること──ドラッカーはそういっているわ」
「具体的に、どういうことが『予期せぬこと』なの?」
「この本では、『メイシー』での出来事を具体例として挙げているわ。この本が書かれる三〇年以上前……ということは一九五〇年代かな。ニューヨークの高級百貨店であるメイシーでは、予想に反して家電製品が売れ始めたんだって。なぜ予想外だったかというと、メイシーの主力商品は婦人服で、家電製品はおまけにくらいしか考えていなかったからなの。これが『予期せぬ成功』よ」
「なるほど──」と五月が言った。「自分たちの『こうしよう』っていう意図とは違う形で成功することが、『予期せぬ成功』というわけね」
「ええ。そしてドラッカーは、これほどイノベーションの機会となるものはないのに、たいてい無視される──といっているわ」
「無視?」
「うん。例えばさっきのメイシーにしても、当時の経営者がこんなことを言ったんだって」

だがうちのような店では、売上げの七割は婦人服でなければならない。家電の伸びが大きく、六割にも達したというのは異常だと思う。健全な水準に戻すために婦人服の売上げを伸ばそうとしたが、どうしてもうまくいかない。(一四~一五頁)

 「へえ!」と五月は目を丸くした。「せっかく家電が売れているのに、あんまり喜んでないのね。どうしてそんなふうに考えてしまうのかしら?」
 すると真実は、次の部分を朗読して聞かせた。

予期せぬ成功をマネジメントが認めないのは、人間誰しも、長く続いてきたものが正常であって、永久に続くべきものと考えるからである。自然の法則のように受け入れてきたものに反するものは、すべて異常、不健全、不健康として拒否してしまう。(一六頁)

 「そして、『変化を謙虚に受け止めるのは、とても勇気が要ることだ』とも書いているわ」

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岩崎夏海(いわさき・なつみ)

1968年生まれ。東京都日野市出身。東京藝術大学建築科卒。 大学卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』等、テレビ番組の制作に参加。その後、アイドルグループAKB48のプロデュースなどにも携わる。2009年12月、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)を著し、ベストセラーに。他の著書に『エースの系譜』(講談社)、『小説の読み方の教科書』(潮出版社)、『チャボとウサギの事件』(文藝春秋)、『宇宙って面白いの?』(講談社)、『まずいラーメン屋はどこへ消えた?―「椅子取りゲーム社会」で生き残る方法』(小学館)、『部屋を活かせば人生が変わる』(部屋を考える会著/夜間飛行)、『『もしドラ』はなぜ売れたのか?』(東洋経済新報社)、『競争考』(心交社)などがある。 また、ドワンゴ・夜間飛行にて有料メルマガ『ハックルベリーに会いに行く』を配信中。Youtubeチャンネル『ハックルテレビ』を運営。2015年から岩崎書店の社外取締役となり、児童書のプロデュースにも携わる。他に、「岩崎夏海クリエイター塾」の講師を2014年から務めている。

 


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