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「世界一速い会社」の秘密
【第3回】 2015年12月9日
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竹田正俊

60点でもいいから、なるべく速く「たたき台」をつくれ

「史上最速」の会社に学ぶ、速さの秘密。今回のキーワードは「たたき台」です。

 100点のものをじっくり時間をかけて作るよりもまず60点のものを最速で作り、それを磨いたほうが結果的に質もスピードも高まります。

とにかく「たたき台」をいち早くつくる

「フロントローディング」という言葉があります。

 ものづくりの業界で使われる用語ですが、「製品開発の初期段階において大きな作業負荷をかけること」を意味します。

当社の試作は「3Dプリンタ」でいち早くカタチにする。

つまり、ものづくりのなるべく早い段階で問題点の洗い出しや改善点などを徹底的に考えて、納期の短縮や品質の向上を図るのです。

 最終的に製品ができた段階で、「これはイメージしていたのとは違う」「これでは使いづらい」と問題点が見つかり、改良していたら、相当な時間とコストがかかります。

 また、その段階になると製作側としては面倒を避けるために、「いやあ、そんなことありませんよ。これで大丈夫ですよ」などと守りに入ることもあるでしょう。そこで発注した側と対立してしまい、余計にムダな時間がかかってしまうのです。

 本格的に製作に入る前に問題点をすべてつぶしておいて、後々トラブルになるような芽をすべて摘んでおく。それがフロントローディングです。

 フロントローディングをするために欠かせないのが「たたき台をいち早くつくる」ということです。

 ものを作るとき、その議論のとっかかりとなる素案や試案のようなものを「たたき台」と呼びますが、このたたき台をなるべく速く作るのが速さを実現する上で、とても大切です。「たたき台」は「tatakidai」として世界に広めたいくらい、素晴らしい概念だと思っています。

 私たちは、特にプロダクトデザインの仕事では、注文をいただいて最初の打ち合わせのときに「たたき台」をつくって持って行きます。

 受注した際に、「どのような製品をつくりたいのか」をだいたい伺っているので、それをもとにCGやクレイ(粘土)でたたき台をつくってしまうのです。

 これには「えっ、もうたたき台をつくったんですか?」と驚かれます。普通は、綿密に打ち合わせをした後につくるものですから。

 その時点でのたたき台を見て、クライアントが「いやいや、こういうものをイメージしてるんじゃないんですよね」と難色を示しても、こちらはまったく動揺しません。その段階で全体像を確認していただき、「クレーム」を引き出すのが目的だからです。

 そして、たたき台のOKが出たら試作品、つまり私たちにとっての本番をつくります。こういうプロセスで進めると、よほどのことでもない限り、試作品が完成した段階で「これはちょっと、イメージと違う」となったりはしません。

 このプロセスを確立できたから、世界最速の試作品づくりを実現できたのです。

 いきなり100点を目指そうとすると、なかなかカタチになっていかずに時間ばかりが過ぎていきます。そうではなく、イメージとしては「まず60点でもいいから最短でカタチにする」ことです。

 ものづくりは新しいことへの挑戦であり、未知への冒険でもあります。つまり、暗闇の中を突き進んでいくようなもの。しかし、たたき台さえあれば、その暗闇がぼんやりと明るくなります。未来を照らしてくれます。

 たたき台は、誰よりも未来をいち早く見るための最強の武器とも言えるのです。

 

「ランニング・チェンジ」で仕事を加速する

 私は会社で暴走族と言われています。

 「この案件、行こう」と決めたらバーッと走り出してしまうからです。社員が「いやいや、そこまで誰も手が回りませんよ」と戸惑っていても走り出してしまうので、社員は「また社長が暴走している」となかばあきらめ気味です。

 本当に無茶な行動の場合は誰かが止めてくれますが、全員が保守的だと事業は発展しません。会社に一人は暴走族がいたほうがいいのではないか、と勝手に思っています。

 やると決断して行動し、引き返さない。トップがそうやって走り出してしまうのは、無謀かもしれません。もっと準備をするべきだと考える人も多いでしょう。たしかに、そのほうが朝令暮改をすることもなく、社員に迷惑をかけずにすむでしょう。

 しかし、「準備」というのは「行動していない」のと同じです。時間勝負の私たちの仕事は、熟考してから走り出していたら間に合わないのです。走りはじめてから考えるしかないのです。

 走りながら考えて、問題が発生したときは方法を変える。この手段のことを、私は「ランニング・チェンジ」と呼んでいます。

 ランニング・チェンジ(running change)は、もともと製造業で使われる専門用語です。新製品を発売してから設計や仕様で変更が必要になったときに、その製品を回収したり供給を止めることなく、変更した製品に切り替えていく方法を指します。

 ランニング・チェンジは、一見行き当たりばったりのように思えます。しかし、私たちのようにものづくりの世界ではつくってみないとわからないことがほとんどなので、つくってから調整していく方法のほうが、少しずつでも前に進んでいけるのです。

 試作品の場合、一発勝負でクライアントの望む製品をつくれるのは稀なケースです。とりあえずカタチにして、「これだとちょっと厚すぎるな」「これはちょっと色がキツイかも」とクライアントの要望を伺います。そのうえでつくり直すというプロセスを何度も重ねて、最終的な試作品ができあがります。

 リンカーンは「できると決断しなさい。方法など、後から見つければいいのだ」という名言を残しています。本当にその通りで、走り出してみたら方法はいくらでも見つかるでしょう。

 ランニング・チェンジこそ、人も企業も速く成長できる方法なのです。

「最速の会社」の秘密を今後どんどん公開していきます。あなたの仕事やチームの仕事をスピードアップさせるヒントにしてください。

(続きは明日、更新します)

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竹田正俊

"株式会社クロスエフェクト代表取締役。1973年京都市生まれ。大手企業の下請け企業を経営していた父を見て、これからは「量よりもスピード」の時代が来ると考え、2000年、試作専門の会社「クロスエフェクト」を創業。徹底した「開発工程の短縮化」「時短」により試作品をどこよりも速く提供することをミッションとする。2009年、心臓など臓器の3Dモデルを開発し、テレビ東京系「カンブリア宮殿」などで紹介され、話題となる。2013年、「ものづくり日本大賞」にて最高賞である内閣総理大臣賞を受賞。「世界最速の会社」として日々、スピードの追求を続けている。


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