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人民元SDR加入に沸く中国メディアで飛び交う5つの誤解

陳言 [在北京ジャーナリスト]
2015年12月10日
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 1年以上にわたって足早に進んだ改革を経て、人民元はついに国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用された。英『フィナンシャル・タイムズ』によると、人民元のSDR入りは国際的な観点から見れば小さな出来事だが、中国人からすれば2015年の一大ニュースであるという。確かにSDRについては、中国内外の温度差はかなり大きい。

 中国で公に発行されている多くのメディアでは、この件に関してさまざまな間違った見解が見られる。その間違いは基本的に2点に分類されるが、一つは「自大派」で、大国の夢がすぐにでも実現すると考えており、もう一つは「悲観派」で、人民元の下落とSDRを結び付けている。

 「自大派」と「悲観派」は、いずれもSDRに対する理解の不足に由来し、誤解している。中国金融の世界経済における実力を鑑みると、SDRの変化は、世界通貨システムを変えていくにはまだ時期尚早だろう。

【誤解1】外国で現地通貨に両替する必要なし

 SDR入りによって、今後人民元を世界どこでも自由に使えるという誤解がすぐに現れた。「思い立ったら即出発するような旅行も、もはや夢ではない。外国に行って旅行や買い物をする時にはいつでも人民元を使うことができ、現地通貨への両替はもはや必要ではない。為替レートのコストやリスクについて心配する必要もない」というものだ。

 しかし、ドルはSDR全体で最高となる41.7%を占めているが、米国人が中国や日本、オーストラリアを訪れる際、ドルで食事をしたり、買い物をしたり、タクシーに乗ったりすることができるだろうか?

 他の主権国家において、どの貨幣を使用するかを決定するのは、それらの国家と現地のビジネス業界であり、SDRへの加入とは何の関係もない。この間違った見解は非常に近視眼的なものであり、掘り下げて考察するにも値しない。しかし、次に取り上げる内容は真に考慮すべき問題である。

【誤解2】SDR加入で海外での人民元準備資産が増加

 この間違った見解の根本的な原因は、SDRをモルガン・スタンレーMSCI新興市場指数のようなものと見なしていることにあるが、SDRに入るなら当然、関連機関が設置されることになる。

 MSCI指数に照準を合わせた基金が海外には多い。そのような投資はMSCIバスケットの割り当てに基づいて投資が行われ、結果として中国資本市場への投資の増加をもたらしている。去年末から市場では、中国が2015年にMSCI新興市場指数に加えられる可能性があるといううわさが流れていたが、審査でつまずき、中国は依然として同指数への仲間入りを果たせていない。

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陳言 [在北京ジャーナリスト]

1982年南京大学卒。『経済日報』に勤務してから、1989年に東京大学新聞研究所、慶応大学経済学研究科に留学、博士課程終了、萩国際大学教授。2003年に帰国。月刊『経済』主筆。2010年から日本企業(中国)研究院を設立、執行院長。ダイヤモンドオンライン、『週刊東洋経済』『アエラ』『中国経済週刊』『中国経営報』などのメディアに数多くの記事を掲載。2015年日本語日刊紙『速読中国』を創刊して編集長を兼任。


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世界第2位の経済大国になった中国は、依然として猛烈なスピードで変化している。一方、中国にはウェブ系も含めると、何千というメディアが存在し、情報が溢れかえっている。北京在住の経済ジャーナリスト・陳言氏が玉石混交の情報の中から、中国の対外関係、多国籍企業、技術革新、中国の経済政策など日本経済や日本企業に影響を及ぼす情報を選りすぐり解説する。そこからは日本のメディアが伝える中国とは、違った姿が見えてくる。

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