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田中均の「世界を見る眼」

プーチンが進める“東方戦略”で
北方領土問題は進展するか

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第51回】 2015年12月16日
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国際政治の舞台で存在感を高めるロシア
プーチン大統領の“頭の中”を推測する

存在感を高めるロシアはどこへ向かうのか。写真は窮地にあった昨年12月18日に開かれた内外記者会見でのプーチン大統領
Photo:President of Russia

 ロシアはグローバルなアクターとして国際政治の舞台に再登場してきた。

 ウクライナへの介入、クリミアの併合に動いたロシアは西側の経済制裁を受け、エネルギー価格下落により打撃を受けた経済の低迷に一層の拍車がかかった。このような背景の中、ロシアは孤立を脱するべく、戦略的巻き返しを図っている。中東ではシリアの空爆に参加し存在感を高めている。プーチン大統領の東方戦略は中央アジアや極東で中国を巻き込み、新たな政治地図を描きつつある。

 果たして、明年春にも予定されると伝えられる安倍首相の訪ロやその後のプーチン大統領の訪日により、北方領土問題は打開されるのだろうか。ロシアの動きは米国との対峙を決定的にし、「新冷戦」と言われる事態を招来する可能性はないか。ロシアは、日露関係は、何処へ行くのだろう。

 戦略家と言われ、国内の支持率も高く、今後10年にもわたり大統領として君臨しそうなプーチン大統領の頭の中にはどのような国家戦略が描かれているのだろうか。大胆に推測してみれば、以下の通りである。

 「ソ連邦の崩壊は20世紀最大の悲劇である。ロシアは多くの権益を失った。東欧諸国やバルト三国までEUやNATOに加盟し、西側の国境がロシアに迫ってきた。それだけではなくNATOはミサイル防衛の配備などでロシアの核抑止力の無力化を図っている。戦略の立て直しが必要である。

 欧州への石油ガスの輸出は頭打ちであり、そもそもエネルギー資源の多くはアジア部に存在している。もはや欧州正面にロシアの未来はない。軍事予算を拡大し、ウクライナを中立化させ、黒海艦隊基地のあるクリミアの併合を行い、シリアの軍事基地を保全しNATOの拡大に備えるとともに、東方戦略を実現に移そう。ロシアの極東部の人口はわずか620万人であり、国境を接する東北三省で1億2000万人の人口を擁する中国に、極東の発展で過度に依存することは安全保障面から問題は大きい。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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