ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

「給料よりもやりがい」と部下に思わせる魔法はあるか

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第40回】 2015年12月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

もはや絶滅人種である
「憧れの上司」

 「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 「これまで、あるいは今の職場で、良い上司だと思われる方はいますか?」筆者は、ビジネスパーソンにインタビューするとき、必ずこう尋ねてみる。ほとんどの場合で、「はい」という答えが返ってくる。その話を一通り聞いた後、もう一歩踏み込んだ質問をしてみる。

「給料よりやりがいだ!」――ブラック企業が言えば説得力はないが、部下に心底、そう思わせる“魔法”は存在する

 「では、こんな人になりたいという、『憧れの上司』はいますか?」

 そうすると、「はい」という回答数はぐっと減る。まあ、基準を厳しくしているので当然である。

 だが筆者が気になっているのは、ここ数年、この質問に対する「はい」の回答が激減していることだ。統計をとったわけではないので、経験的に感じているだけではあるが、「良い上司だけど、大変そうだしああなりたいとは思わない」という回答が増えているように思う。要するに、ロールモデルとしての上司像を持てないでいる社員が増えているのではないだろうか。

 ダニエル・ピンクの著書『モチベーション3.0』を持ち出すまでもなく、社員のモチベーション向上には、金銭などの「経済的インセンティブ」だけではなく、やりがいや認知といった「社会的インセンティブ」が重要であることは、読者の皆さんも経験でご存じのことと思う。

 だが、こういった社会的インセンティブは、金銭などのように「いつ、誰から、どのようにもらっても同じ価値を持つ」ものではない。

 例えば、上司から「よくやった」と褒められ、認めてもらうことは、一般には誰にだって嬉しい心理的報酬になるだろうが、それが「尊敬している上司」「憧れの上司」からだった場合と、「普段からよく思っていない上司」からだった場合には、嬉しさ、すなわち社会的報酬感に雲泥の差があることは簡単に想像できるだろう。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧