2016年、日本経済再生のための課題は何か。消費増税の是非は、財政再建の正しいあり方とは。経済成長は実現できるのか、経済・金融政策の行方は。さらに景気は、賃金はどうなるのか。リフレ派の論客、飯田泰之・明治大学准教授と、構造改革派の論客、小黒一正・法政大学教授が議論を戦わせる。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 河野拓郎)
「最大の注目点はやはり選挙」
「軽減税率の問題は片が付かない」
──まずは、2016年の注目テーマを挙げていただけますでしょうか。
飯田 時系列で言うと、北海道新幹線が通り、電力自由化があり、伊勢志摩サミットがあり、参院選があり……というのが今のところ決まっていることですね、そして参院選前後に、2017年4月の消費増税をどうするかが決まる、という1年だと思います。
小黒 一番大きなイベントはやはり選挙。7月に参院選があることは確定しているわけですが、衆議院との同日選になるか否かが、大きなテーマですね。
これは消費増税を本当にやるかやらないかに絡むと思います。一つにはやるとした場合、増税を決めた後に選挙だときついので、早めに衆院選をやりたいという考え方です。もう一つは消費増税の先送りです。軽減税率を実際に制度設計に落としていく場合、軽減の線引き問題によって小売等でかなり混乱する恐れがある。これが政治に返ってくるところを避けたいとなると、消費増税の先送りを命題にして選挙するという可能性もある。
──軽減税率については、とりあえず「酒類と外食を除く食料品全般および新聞が対象」ということで決定しました。
飯田 軽減税率では、どうしても二つ問題がある。一つは既に問題になった「線引きをどうするのか」について。これはいくら議論しても片が付かないと思うんです。
小黒 片付かないでしょうね。外食を除いても、今度は景品付きのお菓子をどうするのかなどといった話が出てくる。制度設計のツメや業界調整を担う財務省や関係省庁は相当大変です。そして、対象を広げていくと今度はもう一つの財源の問題が出てくる。もともと軽減税率で減る税収が4000億円だったものが1兆円くらいになった。政府・与党が責任を持って財源確保を図る予定ですが、現在は6000億円足りないということになっているわけです。
飯田 さらに、2021年にインボイスが入るという話が出たこと自体は非常に良いと思っているのですが、その一方でインボイスがない状態で4年間、軽減税率をどう運用するのか。政府・役所は何を言っているのか、まったく分からないというのが正直なところです。
──経済学者などの間では、もともと軽減税率に対して大きな批判がありました。
飯田 昨年12月に雑誌「SPA!」でアンケートを行ったのですが、「積極的に賛成」は200人中数人でした。「負担軽減はどこかでやらなければならないから、やらないよりはいい」という人が2割弱くらいで、8割はそもそも反対です。僕自身も含めて「消費増税自体に反対」という人も多く増税の是非そのものは議論が分かれますが、それを置いておくと、軽減税率に関してはほぼ経済学者の合意はできている。しかしなぜか、なし崩し的に決まってしまった。