アップルのiPadが発売された2010年5月28日。東京都内の販売店には数百人が列をなし、お祭り騒ぎとなった。

 ところが、皮肉にもアプリケーション開発会社やゲーム会社、出版社などのコンテンツ制作会社はライバル端末に期待を寄せ始めている。グーグルのOS「アンドロイド」を搭載する携帯電話だ。

 出版社やゲーム会社がiPhoneやiPad向けコンテンツをアップルの用意する「App Store」で販売する場合、その中身について事前にアップルによる審査を受けなければならない。

 そして現在、この審査に通らないコンテンツが続出している。iPhone向けに電子書籍を提供してきた廣済堂は、最近、すべてを審査で拒否された。

 また、審査を通ったものでもアップルの意向で、突如販売を停止させられたケースは電子書籍に限らず、あらゆるジャンルで、世界中で起きている。しかも厄介なことに審査に通らなかった理由が明確に示されないことが多い。

 一方、グーグルの姿勢はまったく異なる。アンドロイド携帯向けのコンテンツ販売の仕組みには「アンドロイドマーケット」があるが、審査はなく「なんでもありの状態」(アプリ開発業者)。

 日本ではまだまだアンドロイド携帯はごく一部だが、米国では10年1~3月期の販売シェアで、アンドロイド携帯がiPhoneを初めて抜いた。ほぼすべての大手携帯電話メーカーが採用しており、今後拡大することは間違いない。

 iPhone向けアプリで売り上げ上位を獲得したあるアプリ開発業者も「これからはアンドロイド向けに力を入れる」と明かす。

 アップルの端末向けビジネスを続けるために、審査を必要としない方式を模索する動きもある。たとえば、電子書籍の場合では読者にビューワーのみをApp Storeでダウンロードしてもらい、書籍自体は自社サイトなどで販売する方式だ。

 とはいっても、この方式もアップルが問題視すれば、規制対象となる可能性もある。

 iPhoneやiPad向けのコンテンツビジネスは発展途上にあるため、アップルも手探りで進めている部分があるのだろう。しかし、明確な審査基準を示さないうえに、一方的に削除を通知してくることもあるとなると、ビジネスの場としてはリスクが大きく、利用者の立場から見ても不都合が大きい。

 新しい市場を立ち上げていくには、コンテンツホルダーとプラットフォーム業者のあいだの信頼関係は不可欠と思われるのだが……。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)

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