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高齢の「買い物難民」を救う移動スーパー・とくし丸の挑戦

大来 俊
2016年1月7日
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急速に進む高齢化社会で
爆発的に増えている「買い物難民」

 日本は高齢化先進国として世界のトップを独走している。浮かび上がっている危機的な課題の一つが、高齢者の“買い物難民化”だ。

とくし丸のテーマソングをかければ、たちまちお客が集まり、人だかりができる。綿密なマーケティングに基づくルート設計が、とくし丸の強みだ

 「買い物難民」とは、地元スーパー・商店の廃業・撤退や、高齢による行動範囲縮小などが原因で、食料品、生活必需品の買い物が困難な人たちのこと。農水省の調査では2010年で380万人、25年には600万人に達すると予測している(生鮮食料品販売店までの距離が500m以上で車を持たない65歳以上の高齢者人口)。

 運転する車の事故対策として、高齢者の自動車免許の更新が厳しくなれば、買い物難民はさらに増えるだろう。

 この買い物難民の救済に真正面から取り組んでいるのが、移動スーパー「とくし丸」だ。冷蔵庫付きの軽トラックに、刺身などを含む鮮魚や精肉、野菜、果物などの生鮮食料品から、惣菜、弁当、寿司、パン、加工食品、菓子類まで、スーパーの商品400~600品目、点数で言えば1000~1500点をぎっしり積み込み、各家庭の玄関先まで行って販売する。

 12年に株式会社とくし丸の住友達也社長が地元・徳島で始め、今では北は青森から南は鹿児島まで、全国24都府県に展開している。14年には、全国にブルーチップ(ポイント)事業を展開するブルーチップ株式会社と提携。全国のスーパーとの提携と販売パートナーの募集を加速させた。現在の契約スーパー数は三十数社。加えて百数十社からの契約申請を受けて順次開業している。

 スーパーといっても、とくし丸は商品を持たない。商品を供給するのは、各地方や各地域で店舗を展開する地元のスーパーだ。つまり、業態としては「販売代行」という形になる。大資本とは組まず、専ら地元のスーパーと提携している。

 さらに、とくし丸の本部では、軽トラックで回る販売員兼ドライバー(販売パートナー)を雇っていない。販売パートナーを務めるのは、とくし丸本部と契約した個人事業主だ。個人事業主としての投資は、販売用に改造した軽トラック代の三百数十万円でほぼ済み、それだけで移動スーパーの店主になれる。

 移動スーパーの売上は、1日6万円~10万円ほど。多い日で13万円を売り上げるベテラン販売パートナーもいる。そのうち粗利は3割程度で、それをスーパーが約10%、販売員が約17%、とくし丸本部が約3%の割合でシェアする。販売員の月収は、日販(1日の販売額)6万円で約29万円となり、そこから車両償却費やガソリン代などの経費を除くと、税込み手取り額は約19万円になる。日販9万円なら手取り額は約33万円だ。

 とくし丸本部の役割は、ビジネスモデル作りやノウハウの提供、ブランドの構築、地域の需要調査などの事業プロデュースだ。つまり独自に生み出した移動スーパーのビジネスを継続的に展開するためのプラットフォームを提供する黒子役が主な役回りだ。

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