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劣悪老人ホームを見抜くプロの眼とは

吉村直子・長谷工総合研究所 上席主任研究員に聞く

ダイヤモンド・オンライン編集部
2015年12月18日
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川崎の老人ホーム虐待事件を契機に、「危ない老人ホーム」がクローズアップされている。一般消費者であっても、ほんの少しの知識を持っておくだけで、こうしたホームに入るリスクを大きく減らす事ができる。プロの見る眼を、吉村直子・長谷工総研上席主任研究員に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

危ないホームを見抜く
見学のコツ

――川崎の老人ホームでの虐待事件は、比較的大手が起こしました。こうしたホームを選ばないためには、どんな点に気をつければいいのでしょうか?

骨折→入院、そして病院を追い出されて、慌てて老人ホーム探し――。こんな探し方で劣悪なホームに入居してしまうお年寄りは少なくない

 いわゆる大手と呼ばれる施設は、一般的には人材教育や研修制度が比較的しっかりしているものです。

 ただ、介護業界は、非常に厳しい人材不足に悩まされています。以前なら不採用にしているような人材でも、採用せざるを得ない、という状況に追い込まれている施設も少なくありません。

 また、ホームの立ち上げペースが速くて、ベテランの施設長が新規施設に異動してしまい、経験の浅い人が施設長になった瞬間、運営面で問題が続出するケースもあります。川崎の事件がどういった背景で起こったのかは、今後の調査を待たなければ見えてきませんが、大手であっても人材不足に苦しんでいることは、知っておいた方がいいでしょう。

 能力が著しく低いスタッフは、事前見学を丁寧にすれば、見抜けます。話しかけてみても、ろくに挨拶もしないとか、対応がぞんざい、といった態度に現れるからです。こういうスタッフが働いているホームは、だいぶ危ないと思ってください。見学の際には、施設長などが案内をすることが多いですが、ぜひスタッフにも話しかけてみてください。

 見学時間も重要です。「見学時間は何時から何時まで」と指定するホームもありますが、食事時や就寝前など、スタッフが一番バタバタする時間であっても、良い対応ができているかどうか。これは大きいのです。時間帯や曜日を変えて、少なくとも3回くらいは訪問しないと、本当のところは見えてきません。

よしむら・なおこ
奈良女子大学大学院家政学研究科(住環境学専攻)修了。1992年長谷工コーポレーション入社。94年長谷工総合研究所に出向、2012年より現職。 有料老人ホーム入居者の生活実態に注目し、ハード・ソフトに対する満足度が生活環境や事業主体に対する評価にどうつながっているかなどについて全国各地のホームで調査を実施。現在は、高齢者住宅事業に関わる制度・政策や市場環境の評価・分析、事業計画立案のための調査・研究、コンサルティングに携わる。 著書に「実践“高齢者の住まい” ~医療・介護・住宅からのアプローチ~」(創樹社、2010年、共著)など。

――見学者向けのつくろった面でなく、素のホームを見る必要がありますね。

 そうです。食事が気に入らずにホームを転居する方も多いのですが、味はもちろん、温かいものは温めて出すなど、基本がちゃんとできているか、チェックしなければなりません。しかし、入居希望者向け試食会だけ、メニューが豪華だったりするのです(笑)。通常の見学に行ったときに試食をお願いしてみるなど、日常がどうなのかを知る必要がありますね。

 また、複数で見に行くことも大切ですね。男性と女性でも、視点はずいぶんと違います。男性は建物の躯体の良さなどに目がいく方が多いですが、女性は室内のインテリアや匂いなどに敏感です。

 要介護度が高い方が多いと、どうしても不快な匂いは出てしまうものです。しかし、匂いをそのままにしている施設もあれば、きつい香りの芳香剤で無理矢理に隠している施設もある(笑)。もちろん、手入れの行き届いた施設は、そんなことをしなくても、うまく匂いをコントロールできています。匂いひとつとっても、ホーム側の運営スタンスで、こんなにも違いが出るものなのです。

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