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勝てる経営者の「会計脳」

社内にはびこる「できない」「しょうがない」の甘い意識が巨額システム投資を無駄にする

鹿島 章 [プライスウォーターハウスクーパース代表取締役]
【第4回】 2016年1月8日
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 世界規模で成長を続けるグローバル企業では、クラウド、ビッグデータ、モバイルなどテクノロジーの進歩によって、経営者が移動中の車内で、前日の自社のグローバルベースでの業績数字をモバイル端末で即座に把握。数字から読み取れる課題に対して、その日のうちに即座に対応策を部下に命じ、すぐに実行させる、ということが日常的になっています。ものすごいスピードで経営判断が行なわれているのです。

 しかし、日本企業においては、依然、進歩したテクノロジーを経営管理の場に活用できておらず、その恩恵を受けることができていません、実は、テクノロジーの活用によるスピード化を阻む、なかなか気づきにくい大きな落とし穴があるのです。

 今回は国内、海外合わせて子会社100社でグローバル展開する、A社を例にお話しましょう。

「経営情報への社長アクセスを遅らせろ!」
テクノロジーが生かされない本末転倒な事例

 A社は事業部制を敷いており、5人いる事業部長は本社の担当事業部、そして、15~30の子会社を統括しています。

 事業部長は、月初めの5営業日までには前月の本社の担当事業部の業績情報を把握することができていましたが、子会社の業績は、子会社で作成したレポートが届く翌月20日頃という状況でした。本社の数字と子会社の数字が揃うのに2週間以上のズレが生じていたのです。

 そこで、A社では「グループ経営」の質を上げるために、グループ企業全体の経営情報を一元管理するシステムを導入。これにより、本社の社長と、その社長に事業の状況を報告する必要がある事業部長は、翌月の第5営業日には、本社、子会社とも、前月の業績、経営情報を同時に把握することができるようになりました。

 グループ全体での統一システム導入を果たしたプロジェクト責任者のコーポレート本部長や経理担当役員は、数ヵ月にわたって昼夜を問わず取り組んだチームメンバーの労をねぎらいました。そして社長や事業部長をはじめ、それを使う社員たちが、システム化によって素早く把握できるようになった情報を有効活用し、グループとしての経営のスピードが速くなることを期待していました。

 ところが、この統一したシステムを導入した後、複数の事業部長から、システム導入のプロジェクト責任者に次のような要望が届き始めたのです。

 「社長が経営情報にアクセスできるタイミングを、われわれ事業部長のタイミングよりも、数日遅らせるように変更してくれ!」

 理由を問うと、「新しいシステムを入れたことで、社長から即座にグループ全体の状況がどうなっているか問われるようになってしまって、その答えを準備する時間がない。想定Q&Aなどを準備したいから、我々が業績を把握するタイミングより、社長が数字を把握できるタイミングを遅らせてほしいんだ」という答えが返ってきたのです。

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鹿島 章 [プライスウォーターハウスクーパース代表取締役]

大阪大学経済学部経営学科卒業。公認会計士。1985年、大手監査法人に入所。上場企業を中心に幅広い業種の監査業務に携わる。1995年、会計事務所系コンサルティング部門に移籍。アトランタ事務所ビジネスコンサルティング部門を経て、会計・経営管理分野の幅広いコンサルティングに従事し、2度の企業統合を経験している。2012年、プライスウォーターハウスクーパース株式会社常務取締役(コンサルティング部門代表)、2015年7月より、現職。

 


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