ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
勝てる経営者の「会計脳」

技術力だけではない!経理部門のスキル不足がグローバル競争の敗因になっている

鹿島 章 [プライスウォーターハウスクーパース代表取締役]
【第2回】 2015年11月5日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 「売上高ばかりに目が行っていて、気がついたら採算がとれていなかった」、「営業重視で人員配置していったら、誰も経理をきちんと見ていなくて決算が締まらなかった」、「送られてきた決算書を見てみたら大きな損失が発生していた」――。

 実はこれ、日本企業の海外現地法人でよく起こっていることです。読者のみなさんは「今どきそんなことがあるのか?」と思われたのではないでしょうか。しかし、これらは、いずれも決して珍しくないことなのです。

かしま・あきら
大阪大学経済学部経営学科卒業。公認会計士。1985年、大手監査法人に入所。上場企業を中心に幅広い業種の監査業務に携わる。1995年、会計事務所系コンサルティング部門に移籍。アトランタ事務所ビジネスコンサルティング部門を経て、会計・経営管理分野の幅広いコンサルティングに従事し、2度の企業統合を経験している。2012年、プライスウォーターハウスクーパース株式会社常務取締役(コンサルティング部門代表)、2015年7月より、現職。

 こうした事態がなぜ起こるのでしょうか。そして、未然に防止する手立ては?今回は、日本企業が海外進出するときのガバナンスの重要性について、あまり語られることがない「会計の面」から考えていきたいと思います。

日本企業の海外子会社が抱える
「経理問題」

 かつて、連結財務諸表は年1回作成すればよい時代がありました。当時は、中堅・中小企業は言うまでもなく、大企業においても、海外子会社の月次決算書の作成はあまり行われていませんでした。子会社の経営状況を、タイムリーに数字で確かめるということが行なわれていなかったわけです。

 すると何が起こるか。

 年に一度の連結財務諸表作成時に初めて経営状況が悪化していることがわかり、そこでようやく、海外子会社を管轄する部門や経理部門の担当者が現地に出向いて経営状況を確かめることになるのです。しかし、ほとんどの場合、そのときはすでに手遅れで、大きな損失が発生していました。

 こうして日本企業が海外現地法人の管理であたふたしているのを横目に、外資系企業では財務・会計の責任者が現地法人の社長と同等に近い権限を持たされて赴任し、海外現地法人の会計基準は整備され、月次レポート作成もしっかりと行なわれ、財務・経理業務は当時からスムーズに遂行されていました。

 この財務・経理業務がしっかり行われることによって、グループ本社で世界中のグループ会社の業績を経営トップが素早く把握し、成長戦略や課題解決のための手を早く打つことが可能になります。外資系企業はこのように、数字をベースにしたグローバル戦略がずいぶん前から適切に行われていました。

 ところが日本企業では冒頭のような事態がいまだに起こっているのです。グローバルにビジネスを行なっているにもかからず、自社で海外子会社も含めた全体の決算数字を適切に把握する、という本質的な問題が解消されていないのです。これでは、技術面でいくら競争力を向上させても、「企業競争力」は脆弱といわざるを得ません。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

 

鹿島 章 [プライスウォーターハウスクーパース代表取締役]

大阪大学経済学部経営学科卒業。公認会計士。1985年、大手監査法人に入所。上場企業を中心に幅広い業種の監査業務に携わる。1995年、会計事務所系コンサルティング部門に移籍。アトランタ事務所ビジネスコンサルティング部門を経て、会計・経営管理分野の幅広いコンサルティングに従事し、2度の企業統合を経験している。2012年、プライスウォーターハウスクーパース株式会社常務取締役(コンサルティング部門代表)、2015年7月より、現職。

 


勝てる経営者の「会計脳」

自社の「数字」の分析が不得意な経営者も多いが、ここを経理部任せにし、実態を把握していないと、大きく経営判断を誤る可能性がある。数字の専門家ではない経営者でも「最低でもこれだけは押さえておくべき」というポイントを会計の専門家でもあるコンサルタントが解説。

「勝てる経営者の「会計脳」」

⇒バックナンバー一覧