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全てを敵に回す水爆実験で北朝鮮は何を狙うのか

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
2016年1月8日
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「核大国」として認知させようとする
北朝鮮の「水爆実験成功」宣言

金正恩第一書記は行動が突発的で読みにくいとの声がある。写真は2016年新年の演説を行う同第一書記Photo:KFA

 1月6日正午、北朝鮮の国営メディアの朝鮮中央テレビは「特別重大報道」で「水爆実験を行い成功した」と発表した。「水爆実験は、我々の核武力の発展をさらに一段階高め、水爆を保有する核保有国の隊列に上った」「水爆実験はほかの核保有国から我々の生存権を守る自衛的な措置だ」と主張した。北朝鮮にとって「核大国」として国際的に認知させようとの宣言である。

 北朝鮮が行なったのが、“水爆”実験であったか否かについては、現時点の分析としては米韓から懐疑的な見解が示されている。

 米ホワイトハウスのアーネスト報道官は「報道された事実に対する初期の調査結果は水爆実験を成功させたという北朝鮮の主張と一致しない」と論評している。また韓国の聯合通信によれば、韓国軍当局者が「米や旧ソ連が実施した水爆実験は20~50メガトンであり、今回の核実験の爆発の規模は6キロメガトンと非常に小さい」として、「水素爆弾と見るのは難しい」と語った旨伝えている。わが国の気象庁も、揺れの波形は過去の核実験の際のデータと似た特徴があると発表している。北朝鮮の発表の真偽が明らかになるまでしばらく検証に時間を要しよう。

 ただ、4回目の核実験が行われたことは、北朝鮮の核問題をめぐる懸念をいっそう高める結果となった。

「核保有国」として
米国と対等な交渉という野望

 北朝鮮の発表の内容からも言えるのは、米国を強く意識しているということである。北朝鮮は経済的に苦しく、外交的にも孤立し、真の友好国、パートナーを持たない。核を保有していなければ、国際的にも重視されず、評価されないであろう。これまでも瀬戸際作戦で国際社会を振り回してきたのは核を保有しているためである。

 同国は、韓国に核を保有する在韓米軍という脅威があり、対話の相手として、韓国よりも米国を意識してきた。そこで、米国とは「核保有国」として対等な立場で交渉したいとの野望を持ち続けてきた。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


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