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東欧危機で現実味を帯びる「ユーロ消滅」
EUに突きつけられた“生き残りの条件”とは?

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第129回】 2010年6月15日
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 ギリシャの財政悪化に端を発したユーロ圏の経済問題は、拡大する様相を呈している。ギリシャの財政悪化懸念は、ポルトガルやスペインだけではなく、ハンガリーやブルガリアなど、東欧諸国にまで広がっている。

 こうした状況が続くと、ユーロの信認が低下することは避けられない。すでに経済専門家の一部から、「最悪の場合、ユーロが消滅することも考えられる」との悲観的な見方も出ている。それが現実味を帯びてくると、わが国や世界経済に与えるマイナスの影響は計り知れない。

為替や金利を自由に決められない
統一通貨ユーロが抱える「構造的な欠陥」

 米ドルや円と共に世界で最も有力な通貨であるはずのユーロは、なぜこんな事態に陥ってしまったのだろうか?

 実は、ユーロには構造的な欠陥がある。ユーロ圏16ヵ国はそれぞれ異なった文化や経済事情を持ちながら、金融政策面では共通の通貨ユーロと同一の金利により、経済運営されている。各国には、財政政策の運営に自由裁量の余地が残されている。

 このような体制では、世界経済が好調な時はよいのだが、一旦景気が後退すると、構造的な問題が露呈することになる。本来各国は、自国の経済状況に合わせて為替や金利を調整することで、景気刺激策を打つ。ところが、ユーロ圏16ヵ国は、為替と金利を自由に決めることができない。

 どうしても、経済規模が大きいドイツやフランスの状況に合わせた為替、金利を受け入れざるを得ない。勢い、財政政策を総動員して景気を刺激することになる。その結果、ギリシャのように経済基盤の弱い国の財政状況は悪化する。

 問題は、ユーロ圏諸国がそうした構造的な欠陥を補完する有効な手段を持っていないことだ。EUとIMFが打ち出した救済のための資金枠は、“時間稼ぎ”の対症療法であり、本質的な解決策ではない。

 現在のように、ユーロ圏の政策当局が対症療法のみに専心していると、いずれ、“ユーロ消滅の日”が現実味を帯びてくるだろう。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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