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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

中央銀行は損失をどう捉えるか
Fedと日銀を比較する

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]
【第196回】 2016年1月13日
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日銀がとった2つの対応
QQEが長引くリスクと財務の健全性を意識

日銀が被りうる損失について、どのような方策が考えられるのか

 日銀は2015年に2つの対応をした。

 第1に、11月に債券取引損失引当金の積み増しを図った。11月13日、日銀は債券取引損失引当金(会計規定第18条が定める自己資本に含まれる)に関わる政令の変更を財務大臣に申請、同月20日、政府は政令の改正を決定した。今回の政令の変更により、日銀は新たに、保有長期国債の利息収入と超過準備などに対する利払い費の差額の50%を、利益が出た場合に積み立て、損失が出た場合には取り崩すことが可能となる。その結果、毎年度、数千億円のペースで債券取引損失引当金が増えると見込まれる。

 第2に、12月にQQEの補完措置を取った。主な内容は(1)外貨建て証書貸付債権や金融機関の住宅ローン債権を適格担保に認定、(2)買い入れ対象となる国債の平均残存期間を従来の「7~10年」から「7~12年」に延長、(3)設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業の株式からなるETFを対象とする新たな買入れ枠(年3000億円)を新設、などである。

 これらの措置により、日銀はQQEの持続性向上を図った。これら2つの対応を合わせると、日銀はQQEが想定以上に長引くリスクを視野に入れる一方、自らの財務の健全性も意識し始めたといえる。

 財務の健全性向上に向けた日銀の努力は前向きに評価されるべきであろう。しかし、将来どこかで始まる出口(テイパリング後の利上げ局面)で日銀の収益が圧迫され、赤字決算に陥ることは十分ありうる。自己資本の積み増しによる財務の健全性確保を図りながらも、赤字が計上されたときの対応も明確にされる必要がある。

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森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

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