これでは「維新」の名が泣くのではないか。

 志ではなく、保身による行動にしか見えないからだ。

 橋下徹・大阪府知事が旗揚げした「大阪維新の会」。大阪の府と市を再編し、東京都のような自治体に作りかえる「大阪都構想」の実現を目指す地域政党だ。来春の統一地方選で各議会の過半数を制し、具体化に乗り出すと意気込んでいる。その維新の会が勢力を拡大させている。

 4月19日の結成以来、橋下代表が掲げた旗の下に馳せ参じる地方議員が後を絶たない。大阪府議会(112議席)では27名(6月21日時点・以下同)に達し、自民党会派を上回る最大会派となった。発足時にわずか1名だった大阪市議会(89議席・欠員2)に至っては、自民党会派から維新の会に鞍替えする議員が相次ぎ、2ヵ月間で11名に急増した。大阪市を8から9の特別区に解体する「大阪都構想」に共鳴しての行動だろうか。

 橋下知事の「大阪都構想」に当初、猛反発したのが、大阪市の市議たちだ。それもそのはずである。自らの存在を否定する構想に賛同する人はめったにいない。また、構想の中身がはっきりしておらず、是非の判断がつかないと冷ややかに見る人も多かった。

 そんな大阪市議たちを狼狽させたのが、大阪市福島区の市議補選の結果(5月23日投開票)である。維新の会の公募候補が既成政党の各候補を退け、圧勝した。橋下知事の圧倒的な集票力を見せつけられ、現職市議たちは言葉を失った。なかでも、浮足立ったのが支持層が重なる自民党会派の議員である。市議選を目前に控え、自らの生き残り策の再考を余儀なくされた。