「マイナス金利の世界」で何が起きるか
今後を考えるためのお薦め参考書

 ところで、率直に言って筆者は、資金取引市場の住人だったことがない。マイナス金利の影響については、リアルに想像できない世界がある。「マイナス金利」を考えるに当たって、良い参考書を見つけたので、読者に推薦しておく。

 徳勝礼子氏の「マイナス金利 ハイパーインフレよりも怖い日本経済の末路」(東洋経済新報社)が、資金取引市場の仕組みと機微について大変参考になる。

 実は、資金取引市場では、以前から円の実質マイナス金利は発生している。本書は、そのメカニズムを詳しく述べつつ(余剰な円資金の運用難とドル資金へのニーズから発生する「ジャパンプレミアム」が重要な原因だ)、資金の取引市場がどのように動いているかを分かりやすく教えてくれる。

 また、欧州の事例等も紹介しつつ、各種の「本質的な問い」に答えながら(第3章「マイナス金利の世界へようこそ」では、お金が価値の保存手段でなくなるとどうなるか、割引現在価値は増えるのか、等に答えている)、本格的なマイナス金利が起こった場合の各種の影響を説明している。

 著者は、外資系金融機関でプロ向けに市場分析の提供を行っているクオンツアナリスト(数量分析アナリスト)であり、金融知識の深さと正確さは折り紙付きだ。加えて、上品なユーモアが漂う文章で、平易かつ大胆にマーケットと金融政策を分析している。日銀に対しても、煽るように批判するのでも、妙に持ち上げるのでもなく、ほどよい距離感で客観的に論じている。

 読者の中にも、資金取引の実態がどうなっているのかを具体的に知っている人は少ないと思われる。マーケット情報を深く楽しむためにも、マイナス金利の世界の今後を考えるためにも、ご一読をお勧めする。

「ハイパーインフレよりも怖い日本経済の末路」という過剰に大袈裟なサブタイトルを見て「引いて」しまう人がいるかもしれないが、それで本書を読まないのは、大変もったいないと申し上げておく。