1月29日(金)の金融政策決定会合で、日本銀行は金融政策で量的・質的金融緩和のさらなる手法として、銀行から預かる当座預金にいわゆる「マイナス金利」の導入を決定しました。経済学や金融市場でも、通常、預金の金利(利息・利子)はプラスであるのが当然です。しかし、「マイナス金利」とは、預金をすると逆に金利が取られるというショッキング(異常)な状況です。国内では混乱もあるようです。今回は、金融理論に加え、市場や決済部門での実務経験も踏まえて、日銀のマイナス金利について考察してみます。
日銀当座預金の金利に3つのパターンを設定する
――マイナス金利の仕組み
マイナス金利の仕組みを具体的に見てみましょう。
まず、民間金融機関が日本銀行におカネを預ける「日銀当座預金」を(1)プラス金利適用部分、(2)ゼロ金利適用部分と、今回新設する(3)マイナス金利適用部分に分けます。
(1)のプラス金利適用部分とは、日本銀行の「量的・質的金融緩和」の下で各金融機関が預けている預金残高(いわゆるマネタリーベース)で、0.1%の金利が適用されます。(2)ゼロ金利適用部分とは、各金融機関が預金保護のために預けている、いわゆる準備預金と、日銀が政策的に行っている貸出支援基金や被災地金融機関支援など公的資金の合計で、これはゼロ金利となり、さらにタイミングを見てその部分を増加させることになっています。(3)マイナス金利適用部分とは、前述2つの部分を上回る部分で、マイナス0.1%の金利が適用されます。今回、このマイナス金利の部分が新設されたのです。
この「マイナス金利」は金融機関に対してだけで、一般の企業や個人の顧客に影響はありません。筆者の経験では、邦銀勤務時代、例えばスイスの銀行に邦銀として口座を開いていましたが、この口座にも同様に「マイナス金利」が負荷されます。あくまで「金融機関間」のみに適用されるルールなのです。
欧州の先行事例に学ぶ
――マイナス金利の目的
これまでの「マイナス金利」の事例をみてみましょう。すべて欧州で、デンマーク(2012年7月導入)、ECB(欧州中央銀行/2014年6月導入)、スイス(2014年12月導入)、スウェーデン(2015年2月)の4つの中央銀行がマイナス金利を導入しました。ちなみに、米国はマイナス金利を導入せず、量的金融緩和からの出口に向かって、金利を引き上げ「正常化」させつつあります。