ファミリーレストランのロイヤルホストや、天丼チェーンのてんやといった外食チェーンを始め、リッチモンドホテルまで抱えるロイヤルホールディングス。多様化する市場に、ポートフォリオ経営で対応しながら増収増益を続けている。どう消費市場を読んでいるのか聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 須賀彩子)

きくち・ただお
1988年早稲田大政経学部卒、同年日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)入行。93年フランスESSEC経済商科大学院大学卒。97年秘書室秘書役(頭取担当)。2000年ドイツ証券東京支店入社、03年投資銀行本部ディレクター。04年ロイヤル(05年からロイヤルホールディングス)入社、執行役員総合企画部長兼法務室長、07年取締役、10年より現職。51歳、神奈川県出身。Photo by Yoshihisa Wada

――現在の外食市場を取り巻く環境をどう見ていますか。

 短期的な景気のサイクルではなく、本質的な市場構造を捉えなければなりません。ロイヤルホスト、てんやともに既存店売上高が前年を上回ったのが2012年のことです。この2012年は、1997年からずっと縮小してきた外食市場、全国の消費支出、さらには百貨店市場も16年ぶりに回復に転じた年でした。

 アベノミクスが始動したのは2013年ですから、まだ景況感はよくありませんでした。それがなぜ2012年に底を打ったのか。「団塊世代が65歳を超えたから」というが、私の仮説です。

 日本では、デフレがあまりにも長く続き、消費が抑えられてきました。それが65歳を超えると年金も安定して入ってくるし、子供たちも独立して使うお金に制限がなくなります。そこにアベノミクスが重なって株価が回復し、金融資産も増えた。つまり、団塊世代の消費が旺盛になり消費市場全体が回復しているようにみえている、というのが私の分析です。

――この傾向は、いつまで続くとみていますか。

 問題は団塊世代の消費余力に持続性があるかです。一般的に70歳を超えると消費は弱くなるといわれています。団塊の下の世代は、ずっとデフレが続いて、お金を貯め込む時期がありませんでした。2020年くらいから日本の消費市場はじわじわと変化が生じてくるでしょう。

 政府は賃上げをすることで消費を増やすとしていますが、将来不安を取り除かない限り、回復はしないとみています。過去20年間のデフレで苦しい思いをし、国の借金は1000兆円を超え、自分の身は自分で守らなければならないと、多くの日本人が感じています。多少賃金が上がっても贅沢をしようとは思わず、貯蓄に回るのではないでしょうか。これが日本のボトルネックです。

――そうした市場に外食企業は、どう対応していけばいいのでしょうか。