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安東泰志の真・金融立国論

銀行を裏切って導入するマイナス金利という劇薬

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第66回】 2016年2月5日
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銀行は受ける痛みをどこに転嫁するのか。銀行預金に影響はないのか?

 1月29日、日本銀行は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定した。具体的には、銀行が保有する日銀当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用し、今後必要な場合はさらに金利を引き下げるというものだ。マーケットは直後に一時乱高下し、その後落ち着きを取り戻せないでいる。マイナス金利の導入は、これまで「異次元」とも言われた量的緩和政策の限界を認めるものであるとともに、その効果は未知数と言わざるを得ない。

異次元緩和に協力してきた銀行への
「裏切り」に等しいマイナス金利

 各市中銀行が日銀に預けている当座預金の残高のうち、法定準備金相当以上の部分の預金を「超過準備」、通称「ブタ積み」と言う。花札用語の価値がないことを表す「ブタ」を用いているように、銀行にとっては、付利されたとしても非常に低利であり、本来は市場運用や貸出に回すべき資金を日銀に寝かせているものとも言える。

 しかし、黒田総裁が登場して以降、日銀が「異次元緩和」の掛け声の下、銀行からどんどん国債を買い入れ、それが超過準備として毎年積み上がっている。この1年だけでも銀行の超過準備は153兆円から222兆円と、約70兆円も膨れ上がってきた(表1)。

◆表1:超過準備額の推移

単位:億円
出所:日本銀行HP

 超過準備には従来0.1%の金利が付いていた。それは、そうしない限り銀行が日銀に協力して国債の買い入れに応じるインセンティブがないためであり、いわば、「日銀のバランスシートを拡大する量的緩和政策」を実施するために必要だったものと言える。そして、黒田日銀の異次元緩和政策の大前提は、「日銀のバランスシートが拡大すれば物価は上がる」ということであった。また、日銀当座預金に0.1%の金利が付いていることによって、曲がりなりにも0.1%程度以上の市場金利が存在し、金融市場が機能していたとも言えるだろう。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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