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中国が発表する経済成長率は本当に“偽り”なのか?

嶋矢志郎 [ジャーナリスト]
2016年2月8日
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中国の常識は世界の非常識?
王国家統計局長はなぜ失脚したか

王保安事件の真相は何か。中国の統計に対する信頼が揺らげば、世界に与える影響も大きい。

 中国共産党の中央規律検査委員会は、国家統計局の王保安局長を「重大な規律違反」で調査していると発表した。王局長は1月19日には世界が注目していた昨年2015年の中国のGDP(国内総生産)を発表し、同26日には中国の経済情勢に関する記者会見に臨み、終了後も取り囲む記者団の質問に気さくに受け答えしていた。その直後の連行、失脚である。

 習近平指導部としては、電撃的な摘発により、「重大な規律違反」への厳しい姿勢を国内外に強く印象づける狙いがあったに違いない。

 その「重大な規律違反」とは何か。肝心の内容が何も明らかにされていないが、一部海外メディアによると、統計データを取り扱う国家統計局のトップである同局長が、事前に外部に情報を漏らしてその見返りに金品を受け取っていたのではないか、という疑惑が浮上しているという。

 さらに今回の事件については、中国の国内外の消息筋から、「本当のデータを公表したら処罰され、捏造のデータを発表したら規律違反では、立つ瀬がない」などと揶揄する声も、筆者の耳に届いた。何らかの目的により、王局長が統計データを改竄していたのではないか、という見方もあるわけだ。

 様々な憶測が飛び交っており真相は不明だが、いずれにせよ、今や世界第2位の経済大国となった中国の統計データを取り扱うトップの汚職がもし真実だとすれば、世界の金融市場に波紋を呼びかねない。今回の報道は、かねてより指摘されていた中国の統計データに関する課題を、筆者に思い起こさせた。それは、統計データの信憑性に関する課題だ。これを機に、それを検証してみたいと思う。

 中国政府が国内外へ向けて正式に発表する統計データの多くは、偽装された「真っ赤な嘘」ではないか――。今回の事件とは直接関係なく、そんな疑惑は以前からずっとあった。今や「知る人ぞ知る常識」として語られている雰囲気もある。真偽のほどは別として、問題はそうした疑惑があるという事実を、いつの頃からか当事者の中国だけでなく、国際社会も暗に認めてきたということだ。

 上海株の大暴落をはじめ、人民元の対ドル為替相場の切り下げ、全国各地で廃墟と化している工業団地や商業施設、主要業種に広がる深刻な過剰設備、さらにはおよそ2億人分に及ぶとされる不動産の余剰在庫など、中国経済の憂々しき実態が次々と顕在化している。中国経済は今、どこまで失速しているのか。全世界が注目する中で、2015年の実質GDP(国内総生産)の成長率が発表されたが、データの信憑性が怪しいことを知る者の中には、公表された数値を信じない人もいたのではないか。

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嶋矢志郎 [ジャーナリスト]

ジャーナリスト/学者/著述業。東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社(記者職)入社。論説委員兼論説副主幹を最後に、1994(平成6)年から大学教授に転じ、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授などを歴任。この間に、学校法人桐朋学園理事兼評議員をはじめ、テレビのニュースキャスターやラジオのパーソナリティなどでも活躍。専門は、地球社会論、現代文明論、環境共生論、経営戦略論など。著書・論文多数。


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