「人生を変えたい」「夢を実現したい」と思う人は多い。しかし、一体どれだけの人がその実現に向け努力しているだろうか。現役の経営者で陽明学者の加地太祐氏は、「成功するためには、何より実践が大事」と説く。本連載では、加地氏の初の著書『成功する人の考え方』の内容をベースに、成功に必要なポイントをお伝えしていく。今回のテーマは、成功する人が持つ顧客の視点について。
商品・サービスを誰に売るのか?
僕は、海外の経営者や起業家が集まるコミュニティにも参加したりするので、比較的グローバルで成功する人達との出会いも多い。
あるとき、ユダヤ人経営者と友人の起業家との対話で、とても興味深い議論があった。今回は、その話をしたいと思う。
その議論は、ユダヤ人起業家のこんなひと言から始まった。
「あなたは多くのお金のない人に、この商品を安く提供したいと言っているが、わたしにはその意味がわからない」
友人の起業家は思った。
事業を経営する上では、もちろん利益も大切だ。
しかし「多くの人に良い物を安く提供してあげたい」という想いのどこが問題なのだろうか?
彼は自信を持って言った。
「僕は、起業家として良い物を安く提供するのが目的なんだ」
しかし、ユダヤ人起業家は笑顔で言った。
「誰かを喜ばせたいと言う気持ちは理解できます。しかし、わたしが言いたいことはそうではありません」
「はっきり言うが、そのやり方では成功しない」
ユダヤ人起業家は「多くの人に安く売る」というやり方は、成功しないと断言したのだ。
僕も友人も、目を丸くして彼の言い分を聞いていた。
なぜなら、僕らは「お金のない人達を喜ばせようとして何が悪いのか?」理解できなかったからだ。
金持ちを相手にしろ
ユダヤ人起業家は言いました。
「あなたが悪いと言っているのではありません。しかし、お金儲けにはルールがあるのです」
「お金儲けにルール?」
「ええ。どんなビジネスでも『どの商品』を『誰に売るのか』このふたつでほとんどの成功は決まります」
「まずひとつ目に、あなたはお金のない人に売ろうとしている。これが問題だ」
僕らは若かったこともあり、少しカチンときた。
「世の中にはお金持ちよりもお金のない人の方が多いはずだ。この人達の方が圧倒的に人数が多いし、その人達に提供する方が成功の確率は上がるはずだよ」
しかし、ユダヤ人の彼は冷静に反論した。
「いいえ、違います。あなた達は人が何を望んでいるのかを知りません」
友人は熱くなって反論した。
「何を言っているんだ。僕らは顧客のニーズをよく知っているよ。みんな安くて良い物が欲しいんだ。だから僕が提供するのさ」
「だから失敗するのです」
僕らの「??」という顔を見て、彼がこう言った。
「人々が望んでいるのは、安い商品よりも高価な商品です。彼らは、お金持ちでも持っているような高価な商品を望んでいるのであって、安い商品はあってもなくても良いのです」
僕らはその答えに驚いた。
「どんな人でもワンランク上の生活。ワンランク上の持ち物を選びます。みんな豊かになりたいのです。もちろん大衆から爆発する商品もあるでしょう。しかし、そのほとんどは寿命が短い。それは大衆の商品だから。アメリカンクラッカーやフラフープもそうだったでしょう? 大衆から生まれた物には憧れがない。だから商品の寿命は短くなるのです」
この考えには多くの意見があると思う。
しかし、キミたちに伝えたいのは「ユダヤの商法にはお金持ちと商売しろ」というセオリーがあるということだ。
もちろん、安い価格や商品でビジネスをする場合もあるだろう。
しかし、ビジネスには必ずセオリー(定石)というものがある。それを理解した上で、さらに常識を打ち破るようなアイデアを生み出すのだ。
経験や勘に頼るだけではなく、セオリー知り、かつそれを越えてイノベーションを目指すのだ。
もちろん、「社会を良くするのも僕らの仕事だ」と言うことは、決して忘れないでほしい。
1976年大阪生まれ。株式会社aim代表取締役。
阪南大学高等学校中退後、溶接工に。その後、サラリーマンになり英会話スクールに通うが、1年後の2004年に通っていた英会話スクールが倒産。当時の従業員に「給料を数ヵ月もらわぬままオーナーが失踪したので助けてください!」と生徒なのに相談される。月商18万円で家賃支払いが23万円と大赤字なのにもかかわらず、「可哀想だから」と400万円を借金して援助し、サラリーマンを続けながら思いがけずオーナー経営者になる。
しかし、3ヵ月で資金がなくなり、助けてと言った従業員も退職。その後、英会話スクールの経営を実弟にまかせるが、1年後に病死する。この人生のどん底のときに安定したサラリーマンを辞め、給料の出ない英会話スクール経営1本に絞る。その後、NOVAが倒産し英会話教師だった外国人失業者があふれた。彼らを黙って見過ごせないと、生徒が増えたわけでもないのに日払いで外国人を雇う。この行動が新聞に紹介され、それがもとで生徒数が飛躍的に増え、以後、順調に業績を伸ばす。
2015年2月6日、交通事故に合い5日間意識不明に。6日目に目覚めたとき、「このまま死んだら僕はこの世界に何も残していないことになる」と愕然とする。
それがきっかけで、スタッフや愛する娘たちに残せるのは「言葉しかないのだ」と悟り「成功する人の考え方」の連載をスタート。純粋に言葉の力を試すために名前をふせたままスタートするも幸運にも支持を得て開始8ヵ月で3万いいね!を突破。月間リーチ数250万人の人気ウェブサイトに成長する。年間1000人以上の経営者と対話し、会社経営を行う傍ら、1人でも多くの成功者を世に出したいと、日夜、記事の執筆に精力を注いでいる。山田方谷を学ぶ実践塾「方谷塾」塾頭、陽明学者。
所属団体
・盛和塾<大阪> 世話人。稲盛和夫の経営者塾世話人
・EO Osaka<Entrepreneur Organization>理事。アメリカに母体を持つ経営者団体。年商100万ドル以上の経営者が集まる団体
成功する人の考え方HP http://ekusia.com/
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※次回は、3月2日(水)に掲載します。
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