ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
課長は労働法をこう使え!
【第6回】 2016年2月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
神内伸浩 [弁護士]

「俺がルールブック」というオーナー社長との戦い方

1
nextpage

最近の労働環境は「ハラスメントブーム」状態。課長にとって、おそらく過去最大レベルに労働法の知識が求められる時代が訪れています。新刊『課長は労働法をこう使え!』の中から、事例とともに実践的な「法律の使い方」をお伝えする連載第6弾。

「神」のようなオーナー社長に
対抗する術はあるのか?

 オーナー社長が一代で築き上げた会社は、当然ながらオーナーの意向が強く働きます。会社のヒト、モノ、カネについて、オーナーが「自分自身の所有物」と考えているケースが多いからです。

 あるオーナー社長は、昇進・昇格・配置転換など、すべてを思いどおりに決めていました。突然、「○○課長は、来週から名古屋支社に行ってほしい」、「営業の○○課長は明日から私の運転手になってほしい」などと言い出します。あるときは、キャバクラで気に入った女性をいきなり役員にして周囲を驚かせました。

 別の、学習塾を経営する会社の話です。

---------

大手予備校の管理部門にいたオーナー社長の息子が専務として入社しました。
社長は「専務を私の後釜にしたい」と考えています。
しかし、部課長たちはまだ20代で世間知らずの専務を認めていません。
あるとき、専務は自分の悪口を言われているという噂を聞きました。
指導課長と経理課長が「使えないバカ息子」と話していたというのです。
「俺の悪口を言うとはけしからん」、「明日から来なくていい」
そう言って、2人の課長を即刻解雇しました。
当然、裁判所は解雇無効と判断し、
会社はやむなく解決金を支払って和解しました。
それでも、社長の代替わりは既定路線です。
社長は息子に経営権を譲ることを決めています。
そして課長2人は、割り切って別の会社へ転職したのです。

---------

 こうした会社ではオーナー社長は「神」にも近い存在だったりします。

 あるオーナー社長に対して、私が「就業規則を見せてください」と聞いたところ、「そんなものはありませんよ。私自身が就業規則なんですから」と言われたことがありました。就業規則がないことも問題ですが、仮にあったとしても「自分がルールブック」という意識が根付いている以上、実態はあまり変わりがないかもしれません。

 そういう会社の場合、課長がオーナー発の労働問題に巻き込まれやすくなります。たとえば、強硬な退職勧奨を受ける、賃金をカットされる、不当な配置換えをされるなどです。 

 このような場合に肝に銘じておくべきは、正当性と待遇の両方が得られる可能性は低く、むしろトレードオフの関係にあるケースが多いということです。
労働基準監督署に訴えたり、会社相手に訴訟を起こして自分の正当性を主張することはできます。

 しかし、正当性が認められることと、その後も同じ会社で仕事を続けられることとは別問題です。「ルールブック」に逆らったのですから、社内での冷遇は覚悟しなくてはなりません。

オーナーと一戦交え、自分の正当性を主張するなら、会社に残るという考えは捨てたほうが良いでしょう。経営者への一歩を踏み出したとも言える課長というポジションを考えれば、多少の不当な扱いは我慢し、オーナーの意向に逆らわずに生きていくという選択肢もあります。うまくいけばさらに昇進する可能性もあります。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

トレーシー・カチロー 著/鹿田 昌美 訳

定価(税込):本体1,600円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
子どもの豊かな心を育て、頭と体を伸ばしていくために親が知っておきたいことについて、最新の科学研究をもとに「最も信頼」できて「最も実行しやすい」アドバイスだけを厳選して詰め込んだ貴重な本。子にかけるべき言葉、睡眠、トイレトレーニング、遊び、しつけまで、これ一冊さえ持っていれば大丈夫という決定版の1冊!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


神内伸浩 [弁護士]

(かみうち・のぶひろ)労働問題専門の弁護士(使用者側)。1994年慶応大学文学部史学科卒。コナミ株式会社およびサン・マイクロシステムズ株式会社において、いずれも人事部に在籍。社会保険労務士試験、衛生管理者試験、ビジネスキャリア制度(人事・労務)試験に相次いで一発合格。2004年司法試験合格。労働問題を得意とする高井・岡芹法律事務所で経験を積んだ後、11年に独立、14年に神内法律事務所開設。民間企業人事部で約8年間勤務という希有な経歴を活かし、法律と現場経験を熟知したアドバイスに定評がある。従業員300人超の民間企業の社内弁護士(非常勤)としての顔も持っており、現場の「課長」の実態、最新の労働問題にも詳しい。
『労政時報』や『労務事情』など人事労務の専門誌に数多くの寄稿があり、労働関係セミナーも多数手掛ける。共著に『管理職トラブル対策の実務と法 労働専門弁護士が教示する実践ノウハウ』(民事法研究会)、『65歳雇用時代の中・高年齢層処遇の実務』『新版 新・労働法実務相談(第2版)』(ともに労務行政研究所)がある。単著は本書が初となる。


課長は労働法をこう使え!

パワハラ、セクハラ、ソーハラ、マタハラ……。昨今は、これまであまり問題視されてこなかったコミュニケーションにも「ハラスメント」のレッテルが貼られるようになりました。課長にとって、おそらく過去最大レベルに労働法の知識が求められる時代だと言えるでしょう。そこで本連載では、国内企業と外資系企業の人事部でサラリーマン経験がある労働問題解決の第一人者が、事例とともに実践的な「法律の使い方」をお伝えします。

「課長は労働法をこう使え!」

⇒バックナンバー一覧